一つ前のお話
妄想小説@時代物「あやかし掃討」①(大野智)
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ハアハアハアハア…
濡れた体を草の上に投げ出した。
空を見れば、爪で引っ掻いたような白い月が、ぼんやりと浮かんでいる。
「大事ないか?」
覗き込むように私を見ながら、男は静かに問いかける。
私は、息を飲み込むように頷いた。
男の手が、スッと私の顎に伸び、ぐいと横に向けられる。
「お前…
男の身体が、さらに私に近づくと、カチャリと音がした。
押さえられた手の力強さに、私は身体を固くする。
ギュッと目をつぶり、息を殺して、次の言葉を待った。
「血が…出ているではないか。」
男は、濡れた着物を引き裂き、ぎゅっと絞って私の頬に当てた。
「すまん。」
私は、ホッと息を吐く。
「痛むか?」
眉根を寄せて、心配げに私を見つめる男に、首を横に振りながら応えた。
「大丈夫、痛くはない。ただ、少し驚いただけ。」
「そうか。」
男もほんの少しだけ、その表情を緩める。
水の音以外、何も聞こえない。
私は、しばし目を伏せた。
だがこれも、ほんのつかの間の静寂。
漆黒の闇に包まれた森から、何かの気配を感じる。
闇に包まれ、何も見えないはずなのに、何かが見える。
「来るっ!」
私は、男に向かって叫んだ。
「下がっていろ!」
その瞬間、四方八方から襲いくる影。
ザシュッ
ザザッ、ザンッ!!!
男は鋭い太刀さばきで、次々と影を引き裂いていく。
ザ…クッ…ググッーーーザンッ!!!
最後の影を打ち砕き、ザーザーと水の音だけが聞こえる深い闇に戻った。
カ…チャン。
男は刀をおさめ、私の元へ歩み寄る。
「さすがだな…。」
そう言って、右の口角だけを上げた。
「さ、行くぞ。」
男は頷き、私の前を行く。
これからどこへ向かうというのだろう。
一体ここはどこで、あなたは誰なのか。
私には、全くわからなかった。
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「今度は私から好きと言いたい」第3話をブログUPしてあります。
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4話からはあちらで書かせていただきますので、もしよろしければいらしてくださいね。
「今度は私から好きと言いたい」
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「あなたを知りたい」蒼月ともえ
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tomoe