前記事の詩
「ふわふわふんわり あなたのそばに」から繋がっているお話です。
http://ameblo.jp/see-la/entry-11555323006.html
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ある日、あなたに恋をした。
「身体は見えない。
声だって、彼には聞こえない。
もちろん、触れることもできない。
それでもいいと思うなら、彼の元へ飛んでいきなさい。」
それでもいいって、私は思った。
大好きな彼の元へ
ふわふわふんわり
空の旅
そうして私は、彼のそばに舞い降りた。
毎日忙しそう。
今日はどこに行くのかな。
名前は「智くん」
そう呼ばれていたのを耳にした。
何も望まない。
ただ、あなたの幸せを守りたい。
携帯のアラームが鳴る。
智くんはそれを止めて、また眠りについた。
しばらくして、もう一度鳴る。
今度は枕の下に押し込んでしまった。
智くん、起きなきゃだめだよ!仕事じゃないの?
私は声をかけるが、聞こえるわけもなく…
それでも、頬に触れ、頭の上でポンポン跳ねてみる。
弾けてひらひらと舞う、私のかけら。
智くんのまつ毛に触れて、キラキラ光る。
起きて、仕事だよ。
遅れちゃうよ!
智くんが、突然むくりと起き上がる。
部屋をキョロキョロ…首をかしげる。
あっと叫んで、枕の下から携帯を探し出し、
「なんで鳴らないんだよ~っ!」
ってぼやいている。
ふふふっ、かわいい。
鳴っていたけど、智くんが止めたんじゃない?
急いで支度を始める智くん。
シャツをガバッと目の前で脱いだ。
わっ!
思わず、目を伏せる。
…あ、でも、見えないからいいのか…
ゆっくり顔をあげれば、パンツ一枚で、パンをかじりながらウロウロしている様子が目に入る。
「カギどこだ~っ?」
カギ、探してるの?
ここにあるよ。
ソファに置いてある、ズボンのポケットだよ。
私はズボンの上で、パチンと弾ける。
「お、ここにあったのか~っ、サンキュー!」
智くんはカギを見つけると、上着のポケットに押し込んだ。
サンキュー…?
智くんは、深夜までずっと仕事。
家に戻ってくると、食事も取らずにソファに突っ伏して、そのまま寝入ってしまった。
大丈夫かな…?
服を着たまま、髪もセットしたままで、泥のように眠っている。
夜中に目が覚めた智くんは、ふらふらと冷蔵庫へ。
水を出すと、ぐいっと一飲み。
はーっと深く息を吐いた。
そしてそのまま、膝から崩れていった。
冷蔵庫の前で、荒い息をしながら倒れている。
私はすぐに飛んでいく。
具合、悪いんだ…
顔が赤い…熱がある。
不意に、助けて…と智くんの声が聞こえた気がした。
私はふんわり抱きしめた。
智くんを包む虹色の光。
大丈夫、すぐに良くなるから。
大丈夫、大丈夫。
そのままどれくらいたっただろうか。
携帯が鳴る。
智くんは目をあけ、電話に出た。
「…はい、わかりました。」
すぐに起き上がり、支度を始めた。
熱、大丈夫?
「ああ、よかった…今回はさすがにまずいかと思った。」
元気になってよかったね。
ホッとしたよ。
「ありがとう。」
えっ?
智くんはキョロキョロと部屋を見回しながら、つぶやいた。
「どこ?」
…?
なに?
「どこにいるの?」
くるりと後ろを向いて、ふわっと笑顔になった。
「ここにいたんだ…。」
そう言って、智くんは私を抱きしめた。
うそ…!
なんで?
私を見つめて、笑いかけてくれる。
「いつもそばにいてくれてたんだね…。」
そうしてゆっくり唇が近づき、ふんわり優しいキスをくれた。
…うそっ…
「なんで…?」
私は、全くわけが分からないというように、首を横にふる。
「俺のそばにね、いつもいてくれてる気がしてたんだ…
智くんはにっこり微笑みながら続けた。
「昨夜も助けてって、君を呼んだんだよ。」
あっ…
助けてって…あの時聞こえた…
「俺、君に会いたくて…願ったんだよ、会いたいって。
そうしたら、虹色に縁取られた君が見えた。」
その時、頭の中で声が聞こえたという。
「キスをすれば…ずっと一緒にいられるって。」
私の頬に手を伸ばす。
触れる手の温かさを感じて驚いた。
「あっ、私…
身体が…ある。
透明じゃなく、人間の、身体。
「身体が…なんで…
「理由なんて、どうでもいい。」
頬に伝う涙を手のひらで拭いながら、もう一方の手で髪を優しく撫でてくれる。
「あのさ、君に会うために、もう一つ条件があるって言われたんだ。」
「な…に…?」
涙がとめどなく溢れ、智くんの手を濡らしていく。
「今度はずっと…
驚く私の腕を引き寄せ、強くだきしめる。
「俺が君を守らなきゃいけないって。」
「…えっ…?」
「俺がキスをすれば、君はもう元の世界には戻れなくなるから…
「戻れない…。」
「そう、戻れなくなってしまったけれど…後悔してる?」
私は、首を横に振った。
眠るあなたの鼻先に
そっと優しくキスをした
今度はちゃんと温かい。
ふわふわふんわり
ふわふわふんわり
ずっとずっと一緒だよ
あなたとともに
ふわふわふんわり
歩いていこう
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