はじめから
妄想小説@「好きで好きで、どうしても好きで。」①(大野智)
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一つ前のお話
妄想小説@「好きで好きで、どうしても好きで。」16(大野智)
http://ameblo.jp/see-la/entry-11867522196.html
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第17話
身体にまとわりつくように、絡んでくるたくさんの手。
逃げたら、髪を掴まれる。
払えば、腕を押さえつけられ、叫べば口を塞がれる。
足首を掴まれ、太ももの内側に張り付くように感じる乾いた手の感触。
いや!
やめて、お願い!
いやーー!
心臓はドキドキしたまま、今、走ってきたかのように息も上がっていた。
暗い室内。
硬直したまま、目の玉だけを左右に動かした。
私は今、どこにいる?
少しだけ身体を動かせば、部屋の隅に鎮座している妙な形のロボットと目があった。
ああそうだ、ここは…。
ゆっくり上体を起こして、二回ほど深呼吸をした。
額の汗を拭い、ベッドの淵に手をかけて立ち上がる。
キューッと胃が苦しくて、ものすごい吐き気が襲ってきた。
口をおさえて、慌ててキッチンに走り寄る。
蛇口から勢いよく水を出し、バシャバシャと顔を洗った。
髪を掴まれた感触が、鮮明に残っている。
追い詰められていくような怖さと、身体に残る張り付くような気持ちの悪さ。
考えれば、吐き気が襲う。
部屋を汚してはいけないと、フラフラとトイレへ向かった。
ドアを開け、廊下に出れば、暗いはずの玄関が白く光っている。
恐る恐る近寄れば、それは白いビニール袋の山だった。
中を覗けば、全部食べ物で埋め尽くされている。
手前の袋の上に、「食べてください。何かあったら連絡してください。」と書かれたメモと携帯電話が置いてあった。
いつ来たのかも分からない。
音も立てず、そっと置いていってくれたのかと思うと、ぎゅっと胸が苦しくなった。
この袋で音を出さずに運ぶなんて、どれだけ気をつかったんだろう。
そんなあなたを思うと、怖さや吐き気がスッと消えていくようだった。
置かれた携帯電話を手に取ると、一つだけ登録されたあなたの番号。
時間は、午前3時を過ぎたところ。
戸惑いつつも、その番号を押さずにはいられなかった。
ワンコールで切ろう。
そう思っていたのに、ワンコールであなたと繋がった。
「どうした?」
その声に、何も言葉が出ない。
出てくるのは、涙ばかり。
「大丈夫か?」
繰り返される優しい言葉に、胸がいっぱいになる。
グズグズと鼻をすすりながら、やっとのことでお礼を言った。
「…ありがとう。これ…。」
「ああ…うん。起きたんだったら、なんか食べろよ。」
「…はい。」
「風呂は?入ったのか?」
「ううん。まだ…。」
「じゃあ、お湯をいっぱい溜めてゆっくりつかれば、またぐっすり眠れるから。
なんか食ったら、風呂入って、そんでまた寝ろ。」
「はい。」
「…じゃあ、10時に行くから…な?」
「はい。」
あなたの受話器から、漏れ聞こえてくるロックミュージック。
「もう、泣くなよ。」
「…それは…無理です。」
「なんで?」
「…あなたが…優しすぎる…。」
「友達に優しくすんのは、当たり前のことだろ?お前が泣くと、また、あのセリフを言いたくなるから、早く泣き止め。」
「…あのセリフ…?」
「だから…俺のここ、空いてるよって。…お前、俺に説明させるの得意だな。」
私は、溢れる涙を止められずに、あなたの言葉を聞いていた。
受話器から聞こえていた音楽は、もう聞こえてこない。
「ったくもう…俺のここ、使わせてやるから、ちょっと待ってろ。」
そう言って電話がプツンと切れたと同時に、カチャンと開いたドア。
「…ほら、来いよ。」
そう言って、手を開いてくれたあなたの胸に、私は勢いよく飛び込んだ。
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「今度は私から好きと言いたい」第3話、この記事の前にUPしてあります。
http://ameblo.jp/see-la/entry-11837861392.html
4話からはあちらで書かせていただきますので、もしよろしければいらしてくださいね。
「今度は私から好きと言いたい」
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移動先では、サトシからコウタに名前が変わっています。
よろしければお気軽にどうぞ。
ただし、あちらは小説を書く場所なので、画像はありません。
普通に小説を読みに来る方がたくさんいます。
なので、嵐さんに関してはこちらのブログでお願い致します。
移動先
「あなたを知りたい」蒼月ともえ
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「愛念」蒼月ともえ
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感謝しています。
tomoe
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