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妄想小説@「tears of love」②(大野智)

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驚いたことに、追試は満点。


私は、答案用紙を返すために、大野くんを準備室に呼び出した。






バンッと、大げさに開くドアに驚きつつも、今日もちゃんと来てくれた。




「テスト、返すね。」



私が、答案用紙を差し出すと、奪うように手にとって、ぐしゃっと丸めてポケットにいれた。




「あ、だから、ダメだって、せっかくの…。」


手を伸ばしかけて、ぐっと握った。



「ごめん、もう関わらないんだったね。いいからもう、行きなさい。

あ、それから…満点、おめでとう。」






私は、握った手をおろして、少しだけ微笑んだ。

このテストで満点を取るのは、容易なことではない。理由はどうあれ、大野くんの頑張りは賞賛に値する。




大野くんは、両手をポケットに突っ込んだまま動かなかった。



「ん?なに?」





「いや、俺の前であんたが笑うは、はじめてだな。」



ああ、確かに…大野くんの前ではおこってばかり。


ポケットに突っ込んだままの大野くんの手が、丸めた答案用紙と一緒に、もう一度私の目の前に現れた。


大野くんは、それを机の上にボンと放り投げると、コロコロ転がって、私の前で止まる。




「…で、せっかくの、なに?」



「あ…えっと…せっかく満点とったんだから、大切にした方がいいと思って。きっと、ご家族の方も喜ぶだろうし…。」






「くだらねー家族しかいねーよ。」




{68B252F1-B702-442B-BC65-D3AC6D5DC4DA:01}







私は、丸くなった答案用紙を手に取ると、両手で開いてシワを伸ばした。




「おめでとう。素晴らしいよ。こんな点数、私だってとったことないよ。頑張ったね。偉かったね。私は、すごく嬉しいよ。」




大野くんは、私の顔を見て、目をまん丸くしている。


「もっと喜ぼうか?」



「ばかじゃねーの?」



そういいながらも大野くんは、答案用紙をきちんと折って、もう一度ポケットにしまった。



「ほんと、うるせーし。」



「あ、ごめん。関わらない約束だったのに。」



「いちいち謝んじゃねーよ、教師だろうが?」




「あ、ごめん…あっ、やだ。」



思わずまた謝る私を見て、大野くんの表情が一瞬緩んだ。

口元を手で覆って、尖った目尻がキュッと下がる。



「あんた、思ったよりバカだな。」



「きょ、教師に向かってバカとはなによ!だいたい私がいつも怒られてるのは、あなたの…




そこまで言って、言葉をぐっと飲み込んだ。



「俺のせいだろ。だったらもう、俺には関わんなよ。」



大野くんは、カバンを掴んで肩に担ぐと、ドアに向かって歩き出す。



「もう暗くなるから、気をつけて帰ってね。」



私は、その背中に向かって声をかけた。



「ガキ扱いすんな。」



大野くんは、ドアをガンと蹴って振り向くと、



「あんたの男…他に女がいる。」




そう言い残して、教室から出ていった。


















続く









…………






おはようございます。






短めですが、キリがいいのでこの辺で。



日常は、大変なことがたくさんありますよね。


私もいろんなことで、本当に大変な思いをしています(ー ー;)


が、お話を書いているときは、それらから離れて、素直に楽しめるので、今は書くことがストレス解消になっています。



みなさんも、いろいろ大変なことが多いと思いますが、


読んでいる間は、それを忘れて楽しんでくれていただけたら嬉しいです(^ ^)









今日も素晴らしい一日を!












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