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妄想小説@「tears of love」④(大野智)

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妄想小説@「tears of love」第4話














コンサートが終わり、会場が明るくなると、皆が一斉に帰り始める。


結局、隣の席は、ずっと空いたままだった。


人に動くなと言っておいて、自分は何処かに消えたままなんて、相変わらずよくわからない。



場内には帰宅を促すアナウンスが、繰り返し流されている。

そうこうしているうちに、私の周りも、数える程しかいなくなっていた。




…帰って、いいよね?


さすがに「動くな」と言っても、「帰るな」ってわけじゃないだろうし…。



私は、会場を見渡してから立ち上がり、
何度も振り返りつつ階段を登り、出口を目指した。







ホールのドアを抜けると、外への出口は、会場を半周した先にある。


もう一度振り返るが、私が居た座席に大野くんが戻っている様子はなかった。





円形のホールに沿うように、湾曲した廊下を歩く人は、もうほとんど見当たらない。

皆、足早に私を追い抜いていく。






もうそろそろ出口というところで、こちらに背中を向けて、立ち止まっている人がチラリと見えた。



…あれ?大野くんじゃ?…


私は、駆け足でその背中に近づき、声をかける。



「大野くん!」



私の声に、振り向いた大野くんの手は、向かいに立っている人の胸ぐらを掴んでいる。


廊下が湾曲しているので、遠くからはその相手が見えなかった。

最初から見えていたらば、声などかけなかっただろう。





大野くんが、胸ぐらを掴んでいる相手は、曽根崎先生だったからだ。



状況は緊迫していた。

私の心臓も、爆発寸前。

理解ができない光景に、何度も二人を交互に見つめた。




「…曽…根崎…せん…せ…い?」



「それ以上来るな!」



大野くんは、怒鳴るように私に言った。

来るなと言われて、はいそうですかと引き下がるわけがない。




今にも飛びかかりそうな大野くんの手を、グッと掴んで先生から引き剥がした。





「なにしてんのよ!」



大野くんの手から逃れた先生は、壁にもたれて中腰になり、何度も咳をしている。



私は、先生の背中を摩りながら、「どうして」と尋ねたが、大野くんは黙ったまま、静かに私を見つめているだけだった。





「先生、大丈夫ですか?」


「…な、なに?なんで、ヒトミがいるんだよ?それに君たち、知り合い…なの?」



驚いたという顔で、私を見る先生の顔は、いつもの曽根崎先生とは違って見えた。




「彼は、私の生徒です。」


「え…そうなんだ…ヒトミの生徒…。」




曽根崎先生は、私たちを交互に見て「ふーん」と声にならない声を出す。

そして、大野くんに顔を向けて、驚くようなことを言った。



「で、なに?二人は付き合ってるわけ?だから、お前は俺にこんなことしたわけ?」



曽根崎先生の言葉に耳を疑った。

なんで私が大野くんと付き合ってることになるの?



「付き合ってるわけないです!だって、私が好きなのは…




そこまで言って、言葉を飲み込む。

生徒の前で、こんな話をしていいわけがない。





「…へえ…でも、こいつはヒトミのことを好きみたいだけど。」




大野くんは、曽根崎先生をギラリとにらんで近づくと、もう一度胸ぐらを掴んで壁に押し当てた。



「おい…ふざけたことばっかり言ってんじゃねーぞ?」



曽根崎先生は、笑っていた。


「ふふっ…離れていても、やっぱり親子だな…女の好みが似てる。」



…えっ?今、なんて…?

親子…?大野くんと曽根崎先生が親子…って?




「…いい加減にしろ。」




{03B2F40C-DDDC-4068-80D9-1F4503EF9D67:01}







「俺のお古で良かったら、かわいい息子に譲ってやってもいいぞ。」




「ふざけたことを…お前、仮にも教師だろうが!冗談でも、言っていいことと悪いことがあるだろうがーーーーーっ!」



大野くんは、曽根崎先生の顔を殴った。



すぐさまもう一発と構える大野くん。




「だめーーーーーっ!」


二人の間に割って入った瞬間、飛んできた一撃をそのまま食らって、私はその場にうずくまる。


痛くて声が出ない。

頭上から曽根崎先生の声がする。



「お前、ヒトミに何やってんだよ。女の扱いを知らないガキが、大人の恋愛に首突っ込んでんじゃねーよ。」



私は、曽根崎先生に抱えられながら、ゆっくりと立ち上がった。



「ヒトミはな、俺のことが好きなんだよ。分かるか?お前がどんなにあがいても、俺には勝てないんだよ。」



大野くんに目をやると、両手で顔を覆って震えていた。



あまりのショックで声が出ない。

代わりに、涙ばかりがこぼれて落ちた。


















続く



…………







おはようございます。






今日は、私用でお仕事お休み。


今は、電車の中にいます。





休みでも休みじゃないんですよね、ほんと(ー ー;)









今日も素晴らしい一日を!







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