おはようございます。
今年は、バレンタイン関係のお話を書く余裕なくて、残念ながらアップできませんでした(;´Д`A
なので、以前アップしたものですが、よろしければ読んでみてくださいね。
………………
「ただいま~」
下で声がした。
えー?
もう帰ってきたの?
隣の家の「さとブー」
部活が終わると、うちに帰ってくる。
小学校からずっとそうだ。
さとブーのうちは、ご両親ともお仕事で忙しい。
だから、うちのお母さんが学童がわりにと、さとブーを預かっていた。
私は、机の上の包みを引き出しにしまった。
時計を見ると、いつもと同じ時間。
今日は遅くなると思っていた。
バレンタインだよ?
部活の後にあっちゃんが、さとブーに告白するって言っていたのに。
タンタンタンと階段を上がってくる音。
「よっ!」
ノックもなしに、私の部屋に入ってくる。
制服のブレザーとネクタイをベッドに投げて、いつもの位置にどっかり座った。
「お前、俺のマンガどこやった?」
「ベッドの下だよ。」
さとブーがベッドの下に手をやって、あったあったと読みかけのマンガを引っ張りだした。
ベッドによりかかって座り、マンガをめくる。
いつもの光景。
お母さんが「ご飯ができた」と呼ぶまでの短い時間を、さとブーは私の部屋で過ごす。
今日は、いつも通りなのが、逆に気持ち悪い。
普段と変わらない さとブー。
だけど…告白されたんだよね?
普通過ぎればすぎるほど、気になってしまう。
あっちゃんのこと、どうだった?
「ねえ、さとブー…。」
「んー?」
マンガに視線を落としながら、返事をする。
「バレンタイン、どうだった?」
「別に、普通。」
「もらえなかったの?」
「…いや、あるけど。」
さとブーが顔をあげて、手繰り寄せた学校のバックを、私に向かってポンと投げた。
私の手の中に、ボスッと収まる さとブーのバック。
「そん中に入ってる。」
「え?あ、そんなつもりじゃ…。」
「お前知ってんだろ?俺、チョコ食わねーの。だから、お前にやるよ。開けて全部持ってけ。」
全部って?
去年までは、義理で渡した私のと、うちのお母さんのやつしかなかったじゃん?
…今年は、あっちゃんの一個だけじゃないの?
恐る恐るあけてみる。
えっ?
なに…これ?
カバンには、たくさんの箱や袋が所狭しと入っていた。
「さとブー…なにこれ?」
「部活の一年がくれた。」
「一年生…だけ?」
「それと、あいつ…鈴木。」
あっちゃんだ…。
私は、バックの中のそれらを出して並べてみた。
いっぱいある…。
あの、大きいのは、きっと、あっちゃんのだ。
「ほんとに全部、いらないの?」
「いらない。」
「…あっちゃんのも?」
さとブーはちょっと考えてから、一番大きな箱を手にとった。
「じゃ、これだけ。」
…あっちゃんのはいるんだ。
何だかよくわかんない感情が、胸の奥から湧き上がってくる。
「お前は?誰かにやったの?」
「えっ?」
「だから、チョコ。」
「…あげてないよ。」
「じゃ、あれは?」
さとブーは、引き出しから飛び出しているリボンを指差した。
相変わらず するどい。
よく見ている。
「あ、あれは…3年の高木先輩に…。」
「マジで?…渡せなかったのか?」
「う、うん…まあね。」
さとブーは時計を見る。
そして、階段を駆け下りていく。
しばらくして戻ってくると、「行くぞ」って私にコートを投げた。
さとブーもコートを着る。
マンガをベッドの下に押しやって、私の机の引き出しを開けた。
「ちょっと、さとブー、なに?いきなり。」
さとブーは引き出しから包みを手に取り、振り返って私に言った。
「今から行くぞ。」
「どこに?」
「高木先輩んち。」
「えっ?」
「俺知ってるから、先輩んち。お前のお母さんには、学校に忘れ物したから取りに行くって言ったから。ほら、早く。」
「え?ちょっと、待って。」
戸惑っている私を見て、さとブーは笑顔になる。
「大丈夫。きっと、もらってくれるよ。」
さとブーは私の腕を掴んで、部屋を出ようと促した。
もう、引けない。
私は電気を消して、部屋を後にした。
後編に続く