俺って誰?
人が四方八方から歩いてくる。
俺は、その真ん中に立っていた。
ここは、どこだ?
気づけば周りには誰もいなくなり、クラクションが鳴り響いている。
俺は、咄嗟に耳を塞いで、目をつぶった。
なんなんだよ、これは!
「…早く、向こう側にいけってことですよ。
そんなこともわからないんですか?
あ~あ、これから先が、思いやられますな。」
不意に飛び込んできた声に、驚き顔を向ければ、俺の肩にインコ。
黄色いやつ。
「誰だ、お前?」
「そんなこといいですから、早く向こうまで走るんですよ、ほら、早く。」
インコは、俺の後頭部をガンガンつついた。
「いってー、いてっ、いててっ!」
追い立てられるように、道路を渡り切ると、すぐ目の前をビュンと車が走り出す。
「あなた、あの真ん中に立っていたんですよ。全く、落ちる場所、もう少し考えた方がいいですよ。
でもまあ、車に当たったぐらいじゃ、あなたは死にませんけれども。」
インコは、呆れた様子でつぶやきながら、俺の頭上を一回りして、また肩に止まった。
「お前、誰だ?」
「見てわかんないんですか?インコですよ、イーンーコ。
はあ…全く。
人間界に落とされても、相変わらずダメダメですね。
これじゃ、いつになったら霊界に戻ることができるやら…。
ほんとに、今度こそちゃんとしてくださいよ。私はもう、巻き添えはごめんですから。」
インコのくせに、ため息をついた。
「おい、お前の言ってること、全然わかんねーぞ。
だいたい、なんだその霊界っつうのは?」
インコは、本当に分からないのか?というように、丸い目をもっと丸くして、俺を見た。
「あなた、前職は何かご存知ない?」
「仕事か?知らん。
つーか、俺自身も、なんであんなとこにいたのか、自分が誰なのかも分かんねーし。
お前、俺のこと知ってるなら、俺は誰だか教えろ。
この際、インコがしゃべることについては気にしないでおくから。」
「いや、そこは気にしてくださいよ。
それにしても、人間にされる場合は、霊界の記憶が消されてしまうんですね。
きっと、話ができるから、いろいろと厄介なんでしょうな。
動物や鳥なんかと違って。
それじゃあ、仕方ないんで、その前に、なんか食べる物を…うわっ!」
「ごちゃごちゃうるさいな、こいつ。
いいから早く教えろ。」
俺は、インコを掴んで、顔の前に持ってくると、
「教えねーと、ぶん投げるぞ。」
と、ボールを投げるように、振りかぶった。
「おいいいいっ!やめてください。やーめーてー!」
「じゃ、わかりやすく説明しろ。あ、短くな。」
俺は、インコを左肩に戻すと、花壇のふちに腰を下ろした。
「ふぅ…ほんとに、乱暴はやめてくださいよ。」
インコは俺の隣にぴょんと飛び降りて、乱れた羽を直しながら、話し始める。
「あなたはですね、死神なんですよ、本当は。」
「死神?なんだよ、それ?」
インコは、チラッと俺を見たあと、ゴホンと咳払い。
「ほんと、相変わらずせっかちですね。
ん、まあ、とにかく最後まで聞いてくださいよ。
それでですね、簡単に言うと、あなたは約束を破った罰として、人間界に落とされたんです。
私を道連れにして。
なんで、私がインコなんだか、非常に不満が残りますが…。
まあ、とりあえずここで、人間の「不幸の涙」をこれに貯めれば、また霊界に戻れます。」
インコは、胸をはって、首にかかった小瓶を俺に見せた。
「不幸一つに涙一滴。
この瓶がいっぱいになるには、どのくらいの不幸が必要なのかは、まだわかりません。
か、しかし、やらねばならないのです。
やらなければ、今度こそ、
私たちは消滅させられてしまうのです。
あの…
俺は、インコの首から小瓶をとって、上や下、横や斜めと、いろいろな方向から眺めていた。
簡単に説明しましたが、これで分かりましたか?」
俺は、インコの首から小瓶をとって、上や下、横や斜めと、いろいろな方向から眺めていた。
「わかったような、わからないような、まあ、いいか。
とりあえず、誰かを不幸にして、その涙をここに集めりゃいいんだな?
…あ、これは、なんだ?」
うっすらと数字が見える。
時計のようだけど…?
「なんですか?見せてください。…あっ、これは…?
まさか、このタイマーが0になるまでに、ということでしょうか…444…
もしや、今日から人間時間の444日後ってことでしょうか…。
こりゃ、大変だ!
早くなんとかしないと、大変ですよ!」
インコは、ぐるぐるパタパタ、その辺を飛んだり跳ねたりせわしなく動いている。
「おい、そう慌てんなよ。
444日後だろ?まだまだ先じゃねーか。」
「…たしかにそうですが、
好き勝手にやれば良いわけでなく、これには4つのきまりがあるんです。
ただ…。」
インコは、胸の毛の中から、小さな紙を取り出して見せてくれた。
「ここを見てください。
半分ぐらい破れてしまっています。
たぶん、ここに落とされたときに、破れてしまったのだと思われます。
とりあえず、一つ目のきまり、あなたが直接手を下して、相手を不幸にしてはいけないということは、読み取れますが…
二つ目の人に感謝されたり、良いことをすると…の後は読めませんし、
残り二つのきまりは、全くわかりません。
私がもっと気をつけていれば…。」
そう言って肩を落とすインコを手に乗せ、顔の前で、その小さな黒い目をじっと見つめる。
「いいじゃん、とりあえず、やってみるよ。
自分で相手を不幸にしなきゃいいんだろ?それだけわかれば、充分だ。
こんな小さい瓶なんか、すぐに不幸の涙でいっぱいにしてやるよ。」
「…霊界にいるときから、そんなあなたの言葉を信用して、とんでもないことになったんですが…。」
インコは、足をあげて頭をかいた。
「それでも、俺んとこにいてくれるんだろ?霊界のことは覚えてなくて悪いんだけどさ、…また、よろしくな。」
俺は、人差し指を出した。
握手の代わり。
2人の間に流れる微妙な空気。
「あ、ちょっと待ってくださいよー。っとに、せっかちなんですから。
言うの忘れましたが、
インコは、俺から目線を外して下を向き、その指に片足をかける。
「ん…まあ、あなたのことを理解できるのは、私しかいませんからね。」
「…えっと、お前のこと、ここではインコって呼べばいいのか?」
「イ、インコ!
私がインコの姿でいるのなんか、おおいに不服なんですから、それは勘弁してくださいよ。
私の名は!
私の名は…って、名前なんか、霊界の頃から、私たちにはありませんよ。」
「じゃ、お前、黄色くてうるさいから、キイロンな。」
「…うるさいの要素、一つもないじゃないですか。」
「まあまあ、いいじゃん、キイロン。
じゃ、俺は…どうするか。」
「私の名付けの法則から言うと、あなたは真っ黒なので、真黒(マクロ)ですかね?」
「なんか、それはどうなんだよ?真っ黒だからマクロって。」
「いや、私のキイロンだって、たいがいですよ。」
2人の間に流れる微妙な空気。
「…わかったよ。めんどくせーし、それでいいか。
とりあえず、こうしてたってなんも始まんねーし、なんか不幸を探してくるよ。」
俺は、花壇のふちから立ち上がると、人だかりのある方へ走り出した。
「あ、ちょっと待ってくださいよー。っとに、せっかちなんですから。
言うの忘れましたが、
あなたには、人間と同じ感情のうちのいくつかは、ありませんからねー!
とりあえず、手をあげ、わかったと返事をして、あの人だかりを目指した。
~たぶん続く~
………………
こんにちは。
あー、やっとこれだせた!
人間界に落とされた死神のお話、書きたかったのー!
あのキャラとはまた違う、オリジナルの死神キャラをずっと考えててね、
頭の中に浮かんだお話、ちょっと書いてみます^_^
えっと、こちらでは黄色いワンコならぬ、インコちゃんもよろしくです^_^
このインコちゃんに、声をあててもらうなら、絶対コロセンセーにお願いしたいって感じで書いてます^_^
ファンタジーなんで、ゆるーく読んでねー
なにかありましたら、遠慮なく言葉を置いていってくださいね。
いつもありがとう。
感謝しています。
tomoe