「愛念」の続編です。
連載で始めますね。(①は番外編)
今の智くんを見たら、「君ヲ想フ」は切なくて筆が進まず…
なっさけないな~って自分でも思うんだけど、物書きを本業としてるわけじゃないし、別にいいよね(TωT)
もうちょっと気持ちが浮上したら、「君ヲ想フ」と同時進行で進めようかとも思っていますm(..)m
ちょっとまだ先のことははっきりわかりませんが、今はただ、幸せな智くんをここに描いていきたいって、そう思うんです。
物語の中だけど…好きな人と生きて、自分の夢をかなえて…そんな智くんをしばらく描いていけたらいいなあと思ってます。
ほんと偏った筆者ですよね・°・(ノД`)・°・
もう、私がほんと辛くて…
ここに救いを求めてるのが自分でもわかるんです…
ということで、書きますね。
よろしければお付き合いくださいませ。
妄想小説@「愛念」①はコチラ
http://ameblo.jp/see-la/entry-11557388231.html
初めていらした方は、第一話から読んでみてくれると嬉しいです(´∀`)
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先輩が帰ってくるまで、まだ時間がある。
私は自分の部屋の整理をしていた。
届いた段ボールを開けると、懐かしい思い出が溢れてくる。
ああ、このタオル…あの時のだ…
今日は朝から熱っぽかった。
身体がキシキシして、調子が出ない。
だけど、先輩との特訓を休みたくなかった。
美術室のドアを開けると、絵の具の匂いに包まれる。
大きな展覧会が近づいているので、多くの部員が残っていた。
先輩は、部員一人一人の作品を、丁寧に見てあげていた。
私は、自分の机に座って、準備を始めた。
しばらく、筆を走らせていたが、なんだかやっぱり調子がおかしい…
今日はこれで帰ろうかと、広げた画材を片付けはじめた。
ダメだ…頭が痛い…
手から筆がポロリと落ちる。
「どうした?」
先輩が、私の様子に気づいてこちらにやってくる。
「大丈夫か?」
そう言って、私の顔を覗き込む。
「あ、いえ…
大丈夫と立ち上がったら、目の前がパッと暗くなる。
身体が支えられなくて、水入れに手をかけた。
そしてそのまま、床に崩れ落ちる。
「ナナ!!」
ふわっと包まれるように、抱きかかえられた。
先輩の声が聞こえる。
「ナナッ!」
応えようにも視界がぼやけ…
せん…ぱ…い…
私はそのまま意識を失った。
私はゆっくりと目を開けた。
「ナナ!」
視界に先輩の顔が飛び込んでくる。
「先輩…私…
「よかった…気が付いて…大丈夫か?」
「はい…すいません…
先輩は大きく息を吐き、ホッとしたと言って笑顔になった。
「お前、まだ熱…あるぞ…
そう言って、私のおでこに先輩が手をのせた。
「熱いな…
今度は私のおでこに、先輩がおでこをくっつける。
ひゃー…なに…先輩…?
近くて…近くて…
先輩が呼吸するたびに、顔に息がかかる。
キュッと身体の奥を掴まれるよう。
身体も心もおでこも…全部が熱くて、ボーっとしてくる。
そっとおでこを離すと、優しい声で話しはじめる。
「無理しすぎだって…
困ったような表情の先輩。
確かに、ここ数日、展覧会に出す絵を仕上げるために、ほとんど徹夜していた。
「ナナ…
先輩は私のおでこにタオルをのせながら、訥々と話しはじめた。
「びっくりさせんなよ…
そう言って、先輩は私の目をじっと見つめる。
「また、お前が倒れたら、俺…
褐色の瞳が大きく揺れている。
こんな風に見つめられたら…泣いてしまいそう。
心がブンブン揺さぶられる。
ギュッとなって苦しい。
悲しいわけじゃない。
けれど、なんだか涙がにじんでくる。
体が熱い…
トクン…トクン…心臓の音。
だんだん早くなる。
沈黙が痛い。
息ができない…
先輩は私から視線を外した。
「いや…なんでもない…
そう言って、ちょっと笑って、私のおでこのタオルを手に取った。
枕元の洗面器で、タオルに水をつける。
キュッと絞って、またおでこにのせてくれる。
「お前の展覧会の絵…
「…はい…
「俺が手伝うから…もう、無理すんな…
先輩は、私の表情を探るように視線を向ける。
「…はい…でも…先輩のもあるし…みんなのだって…
私の言葉を遮るように、先輩が言った。
「つべこべ言わずに俺に手伝わせろ。」
先輩は、私の頭の横に座る。
ベッドが斜めに軋んで、身体が先輩の方に傾く。
「ナナ…
振り向くようにこちらを向いて、私を見下ろす先輩。
先輩の指が、ゆっくり私の顔の上に降りてくる。
私は反射的に目を瞑った。
私の頬の上を指が滑っていく。
ビクッと身体が反応する…
頬に神経が集まって、その指の温かさに苦しくなる。
「…髪の毛…食べてるぞ。」
ああ、そっか…
口に入った髪の毛を、取ってくれたのか…
私はそれまで止めていた息を、はーっと吐き出した。
もう、ほんと心臓に悪い。
熱とか関係なしに、身体が熱くなる。
「なんだ?どうした?顔も赤いし…どっかまだ苦しいのか…?」
「あ…いえ…胸がちょっと…
そう思わず言って、わけのわからないことを言ってしまったと、すぐに後悔した。
「胸、痛いのか?」
「あ、いや、そうじゃなくて…
「大丈夫なのか、ほんとに?」
先輩が身を乗り出して、私のことを見つめてくる。
これじゃあ、どんどん苦しくなる。
「あ、だ、大丈夫てす…。」
「どこが痛いんだ?見せてみろ?先生に言ってくるから。」
そう言って、かけられていた布団をめくる。
「え、あ、大丈夫…です…
私の声は消えてなくなりそうなほど小さくなる。
「胸じゃあ、俺は見られないし…どの辺が痛いのか、自分で触って教えてよ。」
「えっ?あ…いや、ほんと大丈夫ですから…
「でも、心臓の病気だったらどうすんだよ!」
真剣な表情で言う先輩に逆らえるわけもなく、私は自分の手を左の胸の上に置いた。
恐ろしく速い鼓動が、手に伝わってくる。
「痛いのか…?」
心配そうに私に言う。
「ほんとに大丈夫なんです…ときどき…たまに…いや、なんだろ…あの…ほんとに大丈夫ですから。」
私が必死になっているのを見て、「本当に大丈夫なんだな?」と確認するように問いかける。
うんと頷く私を見て、先輩は「はーっ」と一つ息を吐いた。
先輩は、布団をそっと元に戻しながら、
「ごめん、なんか俺、必死だったな?」
と、首を振りながら、照れくさそうに言った。
「…いえ…心配してくれて…ありがとう…ございます…
「あ、お、おう…
先輩は手で顔を隠しながら、先生呼んでくるって保健室を出ていった。
私は大きく息を吐いた。
ああ…緊張した…
熱どころじゃないよね…
私の問いに、胸がドキンと大きく返事をした。
私は、おでこにのせられたタオルを手に取った。
…あ、これ、先輩のだ…
時々目にするブルーのタオル。
ちゃんと洗ってから返さなきゃ…
先輩が戻ってきたらそう言おうと思って、タオルをキュッと握りしめた。
しばらくして、お母さんが迎えに来た。
そのまま先輩には会えずじまいで、車で家まで帰ってきてしまった。
…このタオル…結局返せなくて…今もここにある…
私の手の中にある、ブルーのタオル。
懐かしくって、小さくたたんでおでこにのせた。
先輩が帰ってきたら、ちゃんと返そう。
懐かしさに包まれながら、私は片付けの続きを始めた。
時計を見れば、午後3時を回っている。
そろそろ買い物に行ってこよう。
私は片づけを切り上げ、クリームシチューの材料を買いに出かけた。
…おいしいって言ってくれるかな…
目を閉じて、先輩を想う。
ああ、まただ…
先輩を想うと胸がドキドキする…
今も昔もこれだけは変わらない。
フーッと息を吐いて、空を見上げた。
どこまでも続く空の青と、先輩のブルーのタオルが重なって見えた。
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ということで、高校時代のエピソードを交えながら、ゆっくり進めていきますね。
よろしくお願い致します。