「おいっ!」
「社長!なんで…?」
お見合いに社長が来た。
私の座る席の前まで来ると、ぐいっと身体を前に倒して手を伸ばす。
「なんだこの頭。」
きちんとアップにセットした私の頭に手を載せて、ぐちゃっと掴んだ。
「や、はなしてっ!」
「は?俺に命令する?」
「ち、違います。離してください。お願いします。」
社長は、私の髪を掴んだまま、ぐいっと引いて無理に顔を上げさせる。
「で、お前、結婚したいわけ?」
「…い、いや、あの…。」
「男にフラれたんだって?」
「なんで、それを?」
ひと月前、確かにフラれた。
浮気された上に、けちょんけちょんに言われてフラれた。
でも、そのことを知っているのは、これから来るお見合い相手だけだ。
酔って絡むように愚痴る私を、その人は優しく聞いてくれた。
『僕は君が気に入ったよ。正式にお付き合いをしたいから、お見合いという形でもう一度時間と場所を変えて会いたい。』
後日、連絡が来て、このホテルのラウンジで、改めて「お見合い」として会うことになっていた。
それが、何故社長の耳に?
「フラれたからって見合いとか、単純だな。」
「…単純でもいいんです。女としての価値がないって言われて…もう、なんでもいいんです。」
社長は手を離して、前の席にどかっと腰を下ろした。
「社長、そこは…。」
「うるせー!俺に指図すんな。
…だからって、おっさんと見合いはないだろ?なんで、好きでもねー、30も離れたヤツと…。」
「歳は関係ありません。
価値なしの私を気に入ってくださったってことが嬉しいんです。
それに、私も少なからず好意を持っています。
…でも、なんでそれを?」
「お前っ!あのおっさんに好意って?好きなのかよ?ふざけんな!お前の見合い相手のおっさんはな…っ…イテテッ!」
「杉森さんっ!」
社長の耳を後ろから掴んでいるのは、お見合い相手の杉森さんだった。
「真彦(まさひこ)、そこをどきなさい。そのお嬢さんは、私の見合いの相手だ。」
「お、親父っ!」
「親父って…えっ?」
私は、杉森さんと社長の顔を交互に見ながら、頭を整理しようと唾を飲み込んだ。
…………
この話は、今のところ続きません。
はあ…鮫島社長はこんな感じかな~~。
どんなかな~~と、想いを馳せる日々。
つーか、老舗旅館の2代目設定って残ってるのかな?
陸人くんのお話を書きながら、脱線して社長を書いてしまいました…。
社長~~~~