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妄想小説@「手」(大野智)

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私の手の甲と、彼の手の甲がぶつかる。



初めてできた彼。

初めてのデート。


そんなに近くに並んでいないのに、なぜか何度もぶつかった。


あ…まただ…


コツンと手の甲が触れる。



近すぎるってこと?

私は半歩横にずれて歩いた。


それでも、またぶつかる。




彼の顔を見上げると、前を向いてすまし顔。

気にしていない様子。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image




信号待ち。

コツンと手の甲がぶつかって、そのままぴったり離れない。


…あ、やだ…どうしよう…離すタイミングが分かんない…



手の甲の、骨の出っ張ったところ。

一センチにも満たない場所が触れているだけなのに、胸がドキドキして手のひらは汗びっしょり。





信号が青に変わった。




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image



ゆっくりと歩き出す。


当たっていたその場所だけ、離れたはずなのにまだ熱い。



手のひらの汗を、デニムの太ももで拭った。

ただ歩いているだけなのに、こんなに緊張するのはなんでなの?




視線の先には、また信号が見えた。

信号が点滅し、やがて赤に変わる。



私たちは立ち止まる。


決まって触れ合う、手の甲の骨の出っ張ったところ。


ギュンギュンと音がするくらい、胸が高鳴る。

手のひらに汗が吹き出す。




こんな小さな場所に、こんなにも神経が集まっていたのかと驚いてしまう。


手の甲を通して、彼の血液の流れる音まで聞こえてくるようだ。






青信号。


止まっていた人々が、ゆっくりと歩き出す。



…私たちは止まったまま、動けずにいた。


やがて信号が点滅し、また赤になる。




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image



触れ合ったままの手の甲は、どちらともなくゆっくりと向きを変えた。





信号が青に変わった。


重なった手のひら。

もうコツンとぶつかることなく、しっかりと繋がっていた。






そこからはもう、ずっとドキドキしっぱなしだった。


彼と繋がっている安心感と緊張と、感じたことのない胸騒ぎ。



好きな人と手を繋ぐ。

たったそれだけで、こんなにも苦しくなる。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image








「少し休もう。」




そう言われて、公園のベンチに座る。

手、繋いだままだ。



休めない。

胸がバタバタしていて、全然休めない。



「緊張…してる?」


私の顔を覗き込んで、彼が聞く。

頭をブンブン縦に振った。



「ふふふ…俺も…すっごい緊張してる…



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image


彼が、澄ました表情から一変、はにかんだ笑顔を見せた。




ドッキ―ンと大きく高鳴る胸。


デートってこんなに苦しいんだ…

もう、心臓がいくつあっても足んないよ。



「手…繋ぎたかったんだけど…タイミングつかめなくって…


そう言って、恥かしそうにちょっぴり赤くなる彼。

もう、なんて言っていいのかもわからずに、下を向いた。



「俺…


彼が、ポツリと話し出す。



「俺さ、何年経っても…こうして手を繋いでいたいって、そう思うよ…



私は胸がいっぱいになって、泣いてしまった。

幸せとか永遠の愛とか、そんなことは、まだわからない。


だけど、今この目の前にいる人は、私のことを大切に思ってくれている。

そう思うだけで、胸がいっぱいになった。



「なんで泣くんだよ…?」


「うん…ごめん。」


ただ泣き続ける私の手を、ぎゅっと握りしめてくれる彼がいた。



「約束な。」


「えっ?」



「また、ここに来て、手、繋ごうな。」


そう言って笑う彼は、私よりずっと大人に見えた。


まだまだ幼い、16の私たちが交わした小さな約束。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-Simplog









あれから何年経っただろう。

毎年ここに訪れては、「ほら」と言って、手を差し出す彼。

あの時の約束は、今もなお、ちゃんと守られている。



私がその手を繋ごうとすると、今では「ダメー!」と遮られてしまう。


「パパとつなぐー!」


ちっちゃな手が、彼の手を占領する。


私も彼も苦笑い。
空いてる方の手をヒラヒラさせて、こっちにおいでと私を呼ぶ。

私は娘に見つからないように、そっと彼のそばに。


そして、あの時のように、手の甲をコツンとぶつけた。



「ママは、パパとつないじゃダメだよ?」


目で「悪りぃな。」って合図する彼。

私は「いいよ」って目で応える。

娘の監視の目を盗んで、時々ギュッとつながれる手。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image



そのたびに、ドキンと懐かしい胸騒ぎ。

変わらないときめきを、今でも私にくれる。



彼の手はあの時からずっと、つながれたまま。


横を向けば、同じ笑顔が二つならんで、私を見ている。

娘と彼、彼と私。
手のひらがつながって、長い影になる。


「また、来ような。」




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image



そう言って笑う彼に、心の底から「うん」と返事した。





「しょうがないから、ママもパパと手つないでいいよ~!」


私と彼は顔を見合わせて、そっと手のひらを合わせた。

温かな温もりが、ツッと伝わって、穏やかな幸せが私を包んでいた。




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image















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耕太まで、あと8日。



このお話は、耕太と絵津子が手を繋ぐ写真を見て書きました。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image





































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