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妄想小説@「智と勇」②(大野智)

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待ち合わせの店に着く。



勇の名を言えば、奥の個室に通された。


彼女はまだ来ていない。


席について、時計を見る。

時間まで、あと15分ほど。



正直言って、今日会う「葉月」さんの顔なんて覚えちゃいない。



勇の言うように、黙ってるだけで本当に大丈夫なんだろうか。

今まで感じたことのない緊張。


手のひらに、じっとりと汗が滲む。

気持ちがふわふわして落ち着かない。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image





時間を20分ほど過ぎた。

ずっと緊張が続いていて、どうにかなりそうだ。


フーッとため息をつく。

来ないなら来ないでいいから、連絡ぐらいくれ。


落ち着かない。

こういうの、何が楽しいのか全然わかんねーし。





「おまたせ。」


ドアがスッと開いて、キャップにメガネ、マスクをつけた女性が入ってきた。

心の準備がないまま、突然の登場に心臓がバクンと揺れた。



「勇くん、ごめんね。収録が押しちゃって…


そう言いながら、キャップを外す。

長い髪がパサッと広がり、ふわっと甘い香りが漂う。




あっ…って思った。


さっきまでイラついてた俺…

それなのに、今は胸が…なんか…おかしい…


まずい…俺、ちゃんと勇の代わりができんのか…

ちょっと不安になってくる。



マスクを外して、メガネをとれば、ああ、確かにきれいで…

勇がどうしても落としたいって言ったのが、分かるような気がした。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image







「勇くん?ねえ、勇くん、聞いてる?」


あ…そうだ、勇は俺だ。

自分が勇でいることさえ忘れてしまうほど、彼女に見とれてた…



「あ、はい。すいません。」


「なあに?かしこまっちゃって。いつもとなんか違うね。」


そう言って、葉月さんは微笑んだ。

定まらない視線を、なんとか落ち着かせて、葉月さんにメニューを渡す。



「う~ん…どうしようかなあ…


髪を耳にかけながら、メニューを指先で追っていく彼女。


髪を耳にかける指先。

メニューをたどる指先。



見ないようにしているのに、目が…追ってしまう…

なんか…ダメだ俺…これ、やばいやつだ…


本能的にそう感じる。

なんかわかんないけど…でもなんか分かる…まずいって。


俺は、なんとかその場を早く済まして帰ろうと、運ばれてきた料理には手をつけず、目の前のビールを一気に飲み干した。













「ちょっと…勇くん、ねえ、大丈夫?」


揺り動かされて、ゆっくり目を開ける。



Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image


柔らかな感触。

ここは…



「勇くん…もう、心配したよ…



葉月さんの顔。

俺の目の前。



ん…?

頭の下のこれってもしかして…


俺…葉月さんに膝枕されてる…

しかも、ここ、どこ?



あの店じゃない。

いい匂いがする…



「勇くん、飲みすぎて寝ちゃって…だから…置いてくわけにもいかないし…とりあえず…うちに…



…えっ…てことは、ここ、葉月さんの家?


俺はびっくりして、ガバッと起き上がる。



……!!



起き上がった拍子に、葉月さんの唇にぶつかって…キスをした。


あまりに突然で、あまりの衝撃で、あまりの柔らかさ…

こんなの…初めての経験で…俺…どうしていいか…わかんねー…



「勇くんって…積極的だね…



葉月さんは俺の首に腕を回して、グッと唇をひっつけた。


うわっ…ちょっと待って…違う…違うっ…て…ちが…う…



「勇くん…


葉月さんの声が耳元で響く。


もう、何がなんだかわかんない…

心の奥が鋭く反応して、考えるよりも早く身体が動いてしまう。



まるで何かに操られているみたいだ。


葉月さんの口から洩れる吐息。

その熱い湿った声。


脳みそのど真ん中を突き抜けていくこの感じは、なんなんだ…







♪~♪~~~~♪♪~~~~♪♪~~~



ぼんやりした頭。


携帯…

鳴ってる…


鳴ってる…?

俺…の?



ハッとして、葉月さんから離れた。


ああ、やっぱり勇からだ…


帰らなきゃ…




「葉月さん、ごめん。」


俺は、走って部屋を出た。













静かにドアを開ける。


「あ…勇…




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image



勇は、玄関の壁に寄りかかって座り、そこで眠っていた。

そっとおでこに触れれば、まだ熱い。



…勇、ごめん…



俺、何やってんだろう。


勇を抱きかかえて、ベッドに運ぶ。




そのまま隣に座って、顔を手で覆った。


勇になんて言おう…

勇になんて謝ろう…


自分のしてしまったことに悔いて、心が苦しかった。





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