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妄想小説@「智と勇」①(大野智)

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俺、大野智(さとし)。


得意な教科は国語と美術。

内向的で、本を読んだり絵を描いて過ごすことが多い。



神経質。

夏でも靴下をはく。



photo:05



こっちは大野勇(ゆう)。

俺の双子の弟。


得意な教科は体育のみ。


社交的。

友達も多い。


女もとっかえひっかえ。



photo:08



二人の名前を合わせると「智勇」となり、「智恵」と「勇気」の意味となる。

まあ、だいたい名前の通りに育った俺たち。



見た目はそっくり。

声も、背丈も体重も全てだ。


あえて区別するには、俺はメガネをかけていて、勇はかけていない…ところぐらいか。



photo:02




高校を出た後、別々に暮らしていたが、今は一緒に暮らしている。

その方が、色々と都合がいいからだ。


俺は、家でネット関係の会社経営。

外に出ることはまずない。


出ても深夜のコンビニくらいだ。

動かないから、腹もすかない。


静かに家にいることが、一番性に合っている。




勇はモデルを経て、芸能界で活躍している。

スポーツ万能、頭脳明晰のイケメンアイドルってことになっている。




だけど…


勇は勉強がまるっきりできない。

数字を見ただけで、身体中にじんましんが出るくらいの勉強嫌い。



そんな勇が、デビューしてすぐ、クイズ番組に出ることになった。

勇はクイズなんかできないから、俺に助けを求めてきた。


勇が俺に頼みごとをするなんて、まずない。

だからとても驚いた。



内向的な俺がいじめられたときは、必ず勇が助けてくれた。

だから、やっと恩返しができると、勇の頼みを快く引き受ける。


俺は勇として番組に出場し、あっけなく優勝してしまう。


そこから、勇は「頭が良い」と世間に認識されてしまった。

寄って、自動的に俺も、芸能界に仲間入りとなる。



芸能界。

非常に合わない。


こんな世界、本当に苦手。

うるさいし、目立とうとするやつばかりで辟易してしまう。



早く家に帰って、読みかけのあの画集を手にしたい。




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image



だいたいこんな簡単なクイズで、何時間かかってんだよ。

早く終わらないかな…


俺は自分の番が来れば、ちゃっちゃと答える。



カットがかかる。


「大野くん、もうちょっと悩んでくれる?」



なんだよそれ…

だから芸能界なんか嫌だ。


勇に迷惑がかかってはいけないし、しょうがないから悩んでいる振りをする。



「う~ん…1番かな…いや、2番です。」


「大野くん全問せいか~~い!!!」


ファンファーレが鳴って、紙吹雪が舞う。

慣れた光景だ。

ちっとも嬉しくない。


どーでもいいから、早く帰してくれ。


作り笑いでインタビューを終え、やっと収録が終わった。
真っ先にテレビ局を後にする。









「ただいま。」


「お帰り。」

勇が笑顔で出迎えてくれる。


「今日も賞品もらったの?」

俺の手にあるでかい包みを見ながら、勇が聞いた。



「うん、ハム一年分だって。」


「こんなにどうやって食うんだよ。」


「俺が明日、母ちゃんとこに送っとくよ。」



「サンキュー智!」

そう言って、勇が俺に抱きついてくる。



愛情表現の素直な勇。

そりゃ、モテるわけだ。


「ほら、今日の。」

俺は、いくつかの紙切れを勇に渡した。


「おっ、ありがと~!」

勇は嬉しそうにそれを見ている。


紙切れには、今日の共演者(女性)からもらったメアドやらなんやら…

まあ、とにかく勇に好意を持っていますってこと。


勇は、その中の一枚を見てニヤニヤ。

早速携帯を取り出して、電話をかけている。




「じゃあ、水曜日の22時ね、オッケー!」


勇は俺に向けて万歳している。


Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image




どうやらうまくいったらしい。

はいはい良かったね。


俺は喜ぶ勇を尻目に、PCの前に座る。


今日の会社の様子を確認し、最新ニュースをチェックしつつ、メール処理。

膝の上には読みかけの画集。


ヘッドホンをつけて、自分の世界に入っていった。










水曜日。


収録を終えた勇が、真っ赤な顔して帰ってきた。



「おい、どうした?」


「なんか、身体が熱くて…熱…あるかも…。」


勇は俺の肩にもたれかかる。

額に手をのせれば、ものすごい熱。



「勇…大丈夫か?」


勇をそのままベッドに寝かせた。

リビングの引き出しを開けてクスリを出し、水と一緒に持っていく。



「ほら、飲んで。」


勇が起き上がって、薬を飲みながら俺に言った。




Blue Moon~大野智~ 嵐×妄想小説-image






「頼みがある。」


直感的にどうせ悪いことだろうと、身構えた。



「なに?」


勇は時計を見る。

時間は9時を回っている。



「智、俺の代わりにデートに行ってきて。」


「ええっ?…そんなの無理だよ。」


やっぱりだ…。

勇の頼みは、俺の頭を悩ますものばかりだ。


「頼む。今日の彼女、どうしてもモノにしたいんだよ。すっぽかすなんてできないよ。」




「いや…俺、無理だよ。女の子と付き合ったこともないし、デートだってしたことなんかない。」


「大丈夫だよ。黙って酒のんでりゃ、女の方から勝手に話し出すよ。」



「嫌だよ。」


「頼むよ、この通り。」



勇が頭を下げている。

こうなると、俺は断れない。


「わかったよ。でも、すぐ帰ってくるから。」



俺は渋々引き受ける。

勇の顔が、ぱっと明るくなった。


「ありがとう、智!あ、でも、彼女を怒らせんなよ。それから、手、出すなよ。」


「出すわけねーだろ!」



全く、何言ってんだか…

はあ…

ため息が出るが、しょうがない。


俺は、勇の部屋を後にした。





いつものようにメガネをはずして、



photo:04



靴下を脱いで


photo:01



俺は勇になった。




気分が乗らない。

女の子とデートか…

参ったな…


そんなの、教科書に載ってなかったよ…

どうすりゃいいんだ?




俺は一抹の不安を抱えながら、彼女との待ち合わせ場所に向かった。















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