こんにちは。
お休みする前に、書き上げてあった「智と勇」25です。
まだ読んでくれている方はいるのかな。
一応、完結するまで書きますので、よろしければ読んでください。
それでは、妄想小説@「智と勇」25です。
よろしくお願い致します。
前回のお話、妄想小説@「智と勇」24はコチラ↓
http://ameblo.jp/see-la/entry-11688429506.html
はじめから、妄想小説@「智と勇」①はコチラ↓
http://ameblo.jp/see-la/entry-11596911987.html
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勇を腹に乗せたまま、今、俺にできることを考えていた。
守りたいものがある。
そのためには、どうするのが一番良いのか…
携帯に表示された、女の名前。
「あとで行く。」
そうメールを打ち、画面を閉じた。
「…智?」
勇が目を覚ました。
「起きたか?おはよう。」
「うん、おはよう。」
一言挨拶を交わし、勇はまた目を瞑る。
起きたんだから、早く腹からどけっての。
そう言おうと思ったけれど、なんとなく言葉を飲みこんだ。
しばらくこのままでいたが、そろそろトイレにも行きて―し、腹も減ったし…
勇を見れば、俺の腹の上でモゾモゾと寝返りをうって、熟睡体制だ。
おいおい、俺、さすがに限界。
お前が膀胱を刺激するから、めちゃくちゃトイレ行きてー!
「こら、勇。早く起きて、顔洗ってこいよ。」
冗談交じりに、勇の頭を軽く叩いた。
「痛って―… 俺、もう、大怪我したから起きられない!」
勇は、俺の腰に手を回してしがみつく。
「おいっ!いい加減にしろよ。仕事あるんだろ?メシ、作るから、そこどけっての!」
俺は腹に力を入れて、ぼよんぼよんと勇を弾ませる。
「…わっ!なんだよ、もう少し寝かせろよ~!」
こういうとこ、ほんっとに昔っから変わんねーな…
「お前な~…それなら、布団で寝ろよ。」
無理矢理勇をどかそうと、肩に手をかける。
「ほらっ、起きろって。」
そう言いながら、ゆさゆさと肩を揺さぶった。
全く動こうとしない勇。
しょうがないなと、自分から身体を引き抜こうとしたとき、勇の腕に力が入る。
全然動けない。
「おい、これじゃ…トイレ…
どうしたんだよと勇を見れば、急に真面目な顔をして、俺を見ている。
「智…何考えてる?」
ドキッとした。
こいつ、カンだけは鋭い。
「…なんも考えてないよ。」
勇は、「そうか…」と息を吐いて、俺の腹に顔を埋めた。
「変なこと、絶対するな。俺は大丈夫だから…頼むから、智は幸せになって。」
「なに言ってんだよ…さ、起きろ。久しぶりに、メシ作るの手伝え。」
わざと明るい声で言葉をかけ、勇の頬を指でつまんで引っ張った。
涙の痕が残る勇の頬。
俺の…守りたいもの。
キッチンに並んで立って、食事を作るのはいつ以来かな…
勇が手伝うと、手伝いにはならなくて、結局俺が全部やり直す。
それでも、なんだかんだ言い合いながら過ごす時間は楽しかった。
やっと出来上がった朝食を、テーブルに並べて向かい合って座る。
「いただきます」と手を合わせ、お椀を持って二人とも味噌汁から。
真ん中に置いたサラダに、同時に箸を向けてぶつかった。
俺は笑って、
「いいよ、お前から取れ。」
そう言って、勇にサラダをとるように促した。
「サンキュー!」
勇は小皿にサラダを盛る。
好きなものは一緒だから、俺が欲しいもの、全部持ってかれた。
あんな山盛り食うのかよ。
そう思って、勇の皿を見ていると、スッと俺の前に皿が向けられる。
「はい、智。」
勇は俺の前に、その山盛りのサラダを置いた。
卵もキュウリもコーンも、俺の好きなものは、全部そこに入っていた。
残ったのは、もやしやレタスだけの味気ないサラダ。
勇はそれを、皿ごと自分の方に持ってって、がつがつ食べていた。
…まったく、お前ってやつは…
箸をつけないでいると、勇が不思議そうに俺を見る。
「なんだよ、食べないの?」
お前なあ…食えるわけないだろ。
「皿、貸せよ。」
そう言って、勇の持っている皿をぶんどった。
自分の前にある、山盛りのサラダを半分にした。
卵もキュウリもコーンも、全部数えて同じにした。
「ほら、食え。」
皿を戻すと、勇は不満そうに言った。
「せっかく俺がとってやったのに…
「…ふふ、そうだな、ありがとう。」
俺が笑うと、勇は頭をかいた。
「行ってくるね。」
勇は、仕事に出かけて行った。
今日は生放送だと言っていた。
さて、俺もそろそろ準備しないと…
ふと、写真の入った箱を見る。
俺が撮った風景の写真だったり、勇の仕事の写真だったりが、ごちゃ混ぜに入っていた。
その一番上に、並んで映る、俺たちの写真があった。
勇と…
俺。
これ、いつのだ…?
なんでこれが一番上に…?
思わず手を伸ばし、その写真を手に取った。
懐かしいな…
無意識に笑みがこぼれる。
埃をふっと吹き払い、左の手のひらに乗せる。
変わってねーな…俺たち…
勇の顔を、人差し指でなぞっていく。
俺の守りたいものも…ずっと変わっていない…
その時、机の上にある携帯が、ブルブル震えて俺を呼んだ。
写真をポケットに突っ込み、携帯を見る。
「わかった」と返信し、俺は急いで出かける準備を始めた。