妄想小説@「先生の隣にいさせて。」①(大野智)はこちら↓
http://ameblo.jp/see-la/entry-11782359430.html
一つ前のお話
妄想小説@「先生の隣にいさせて。」③(大野智)はこちら↓
http://ameblo.jp/see-la/entry-11783503271.html
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「塔子ちゃん、ドア、開けて。」
「あ、は、はい。」
私は、部屋のドアを開けて、一歩 中に入った。
続いて彼も入ろうとしている。
やばっ!
ぜんっぜん片付けてない!
ベットの上に放り投げたパジャマ。
ソファーの上には、たたみかけの洗濯物の山。
机の上もぐちゃぐちゃだ。
あーーー!こんなの、見せられないっ!!!
私がそれ以上進めないでいると、後ろから彼の声がした。
「どうしたの?」
「あ、えっと、やっぱり、廊下でいいです。廊下に置いておいてくださいっ!」
私が後ろを向いてそう言うと、彼は「わかった」と箱を下ろした。
そのまま後ろ手でドアを閉め、お礼を言った。
「ありがとうございました。」
「いえ、どういたしまして。」
帽子を取る振りをして、お辞儀をしてみせた。
王子様みたいだった。
「成瀬くーん、あとどのくらい?」
リビングからお姉ちゃんが顔を出す。
「ん~、あと少し。もう荷物は全部運んでもらったから、シートを剥がせば終わりだと思うよ。」
「了解。」
「塔子、お蕎麦、どのくらい食べる?」
「えっ?お蕎麦?あ~…ちょっとでいいよ。」
「ちょっと?いつも2人前食べるくせに、どうしたの?食欲ないの?」
「ちょっとでいいってば!」
「わかった。お菓子食べすぎたんでしょ?」
「違うよ!もうっ!」
お姉ちゃんは、笑いながらリビングのドアを閉めた。
「塔子ちゃん、細いのにお蕎麦2人前食べるの?」
「えっ?」
大食い大食い大食い大食い…
頭の中を大食いの文字がぐるぐる回っていく…
「健康的でいいね。」
健康的健康的健康的健康的…
いいねいいねいいねいいね…
大食いから文字が変換されて、ぐるぐる回っていく…
「あ、部活…やってたから…お腹すくんです…。」
「そっか。てことは、運動部?」
「はい、テニス部でした。」
「あ、順子もテニス部だったよね。」
「はい、お姉ちゃんと一緒です。」
「じゃあ今度、みんなでやろうよ。俺も実は、テニス部だったから。」
「ほんとですか?」
「ほんとだよ。」
そう言って、めちゃくちゃにラケットを振る振りをして、私を笑わせる。
「…作業おわりました~!確認お願いしま~す。」
引っ越し業者の声に、「行くね」と言葉を残して、自分の部屋に向かっていった。
なんか、なんだか…緊張する。
彼の背中を見送りながら、私はふうと息を吐いた。
ローカに置かれた段ボールを、ずるずると部屋に引き入れる。
箱を開けて、『走れメロス』を手に取った。
…もう一回読んでみようかな…。
私はベッドを背にして床に座り、本のページをめくる。
―メロスは激怒した。必ず、かの
冒頭部分を目で追うと、島の思い出が蘇り、懐かしさで胸がいっぱいになった。
中学のみんな、元気かな…。
お父さんお母さんは…。
ああ…だめだ。
我慢していたはずなのに、涙がどんどん溢れてくる。
まだ、高校も始まっていないのに、ホームシックは早過ぎるでしょ…。
涙のダムを崩壊させて、大洪水を起こしていた。
トントン…カチャッ…
「塔子?」
お姉ちゃんの声に、顔を上げた。
「大丈夫?」
「…うん。」
「そっか…。」
「…うん。」
「お蕎麦できたから、落ち着いたら食べにおいで…。」
「…うん。」
「あのさ、塔子…これ、塔子にあげる。」
「…?」
「お父さんとお母さんが、塔子をよろしくって、私に送ってくれたお守り。」
お姉ちゃんが、膝をついて、私の手にそっと握らせてくれた。
それは、手作りのお守り袋。
「開けてみて。」
「いいの?」
お姉ちゃんは「うん」と頷く。
袋を開けて中を覗くと、小さな紙が入っていた。
「順子、頑張れ。
塔子、負けるな。
順子、しっかり。
塔子、泣くな。
順子は塔子を守ってあげて。
塔子は順子を助けてあげて。
順子、たまには帰っておいで。
塔子、たまには帰っておいで。
お前たち二人の健闘を祈る。
お父さんお母さん大明神」
もっと涙が出た。
「あとで、ここにお蕎麦持ってくるから。」
そう言ってお姉ちゃんは、そっと部屋のドアを閉めた。
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妄想小説@「先生の隣にいさせて。」
※同じお話が、以下の場所にも置いてあります。
※愛念の番外編をちょこっと書きました。
(http://ameblo.jp/see-la/entry-11500367884.html
)
続きは下記にありますので、
よろしければお気軽にどうぞ。
ただし、あちらは小説を書く場所なので、画像はありません。
普通に小説を読みに来る方がたくさんいます。
なので、嵐さんに関してはこちらのブログで、今のところはメッセージにてお願い致します。
「愛念」蒼月ともえ
PC http://www.berrys-cafe.jp/pc/reader/book.htm?bookId=984608&c=n
スマホ http://www.berrys-cafe.jp/spn/reader/book.htm?bookId=984608&c=n
「愛念」トップページにある、私の名前をクリック(タップ)すると、ここにしまってある、他のお話も読めると思います。
いつもありがとう。
感謝しています。
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