一つ前のお話
妄想小説@「好きで好きで、どうしても好きで。」12(大野智)
http://ameblo.jp/see-la/entry-11865178627.html
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第13話
ドアを開け、家の外に出た途端、膝から崩れて倒れ込む。
「ごめんなさい…足が…。」
恐ろしさで、身体が思うように動かない。
あなたは自分の着ていた上着を脱ぎ、私の身体にかけてくれた。
片膝をつくように私の前に屈み、膝裏に手を入れて、スッと私を抱き上げる。
「ちょっとだけ我慢して。怖ければ目を瞑っていろ。」
そう言って走り始める。
私は目を閉じた。
静かな夜に、走るあなたの足音と息遣い。
ふと、思う。
あなたは、誰ですか…?
あなたが歩みを止めた。
目を開ければ、タクシーのドアがスッと開く。
あなたは私を丁寧に降ろし、あとから自分も乗り込んだ。
ドアが閉まったと同時に、滑るように走り出す。
「山田さん、とりあえずいつものとこ。」
「わかりました。」
沈黙する車内。
山田さんが、ステレオのスイッチを入れた。
軽やかに響くロックミュージック。
リズムの合間に思い出す、さっきまでの私。
捲れたタンクトップの裾。
ガサガサした手の感触。
引っ張られた髪は、ひどく乱れていた。
掴まれた腕もギシギシ痛む。
蘇る記憶に、心が黒く覆われていく。
家のこと、男のこと、されたこと…全部、思い出す。
ガタガタ震えだした身体を二つに折り曲げ、手首を噛んで声を殺して泣いた。
怖くて怖くて…
でも、どうにもできなかった…。
山田さんは、黙ってボリュームを上げた。
音楽は、私の嗚咽を優しく包んでいく。
「ごめん。」
そう声が聞こえて、驚き顔を上げると、あなたの瞳が大きく揺れていた。
瞬きをゆっくり一つ…。
すると、あなたの目からも、ツーッと涙がこぼれて落ちる。
「なんで…。」
「きっと…友達…だからだよ。」
「とも…だち…?」
あなたは、小さく頷いた。
「…俺の…大切な…友達に、なってほしいんだ…。」
あなたの言葉に、また涙が溢れてくる。
友達…。
それは、不安を安堵に変える言葉。
「もっと早く行けばよかった。ごめんな。」
私は首を横に振る。
「ありがとう、来てくれて。」
一度溢れ出した涙は、なかなか止まってはくれない。
私は、涙がこぼれないように上を向く。
「…なあ?」
「はい…?」
「俺のここ、空いてるよ。」
そう言って、あなたは自分の胸を叩いた。
私は、意味が分からない。
「そっか…カスガとか、お前、知らねーもんな。」
私が首を傾げると、
「俺の胸、貸してやるから、ここで泣けって意味…こういうの説明させるなよ。説明苦手だって言っただろ?」
そう言って、頭をカリカリ、鼻をつまんだり耳を引っ張ったりと、あなたはまた落ち着かなくなる。
私は、そんなあなたの様子が可笑しくて、少しだけ笑顔になった。
「もう、平気。心強い友達ができたから。ありがとう。」
そうお礼を言うと、あなたはフーッと息を吐く。
「おい…まだ言わす気かよ。」
「えっ?」
「じゃ、言い方変える。
こういうとき、友達の俺は、お前の気持ちに少しでも近づきたいって思う。
思いも、涙も、全部一緒に引き受けたい。
来て… 」
私は、強く引き寄せられたあなたの胸に、顔を埋めて泣くことができた。
ありがとう。
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「今度は私から好きと言いたい」第3話をブログUPしてあります。
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4話からはあちらで書かせていただきますので、もしよろしければいらしてくださいね。
「今度は私から好きと言いたい」
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ただし、あちらは小説を書く場所なので、画像はありません。
その分、こちらでお話を書くときは、皆様が楽しんでいただけるように、画像を入れてのお話をちゃんと書かせていただきます。
また、あちらは嵐さんとも関係のない場所です。
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「あなたを知りたい」蒼月ともえ
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「愛念」蒼月ともえ
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