はじめから
妄想小説@「好きで好きで、どうしても好きで。」①(大野智)
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一つ前のお話
妄想小説@「好きで好きで、どうしても好きで。」30(大野智)
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「好きで好きで、どうしても好きで。」(蒼月ともえ)
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第31話
食器を片付けたあと、あなたに教えてもらった、近くのショッピングモールに行った。
趣味の部屋から見えた景色とは、まるで違うビルの森。
人も多くて、みなオシャレだ。
ノーメイクにマスク、ジーパンにラフなシャツな私は、なんだかこの街とは不釣合い。
服を買おうと立ち寄った店の値段に驚愕し、何も買わずに飛び出てくる。
前借り、多すぎると思ったが、ここではこれぐらい当たり前なんだ…。
向こうの物価に慣れていた私は、お金の感覚に戸惑いながらも、なんとか適当なものを見つけて買い揃えた。
洋服は、コットンのワンピースを2枚買った。
上下を分けて買うと高いし、パジャマにも外出にも使えそうだったから。
あとは下着と化粧品類。
身の回りの雑貨。
その他諸々。
そして、買い物をしながら思い知る。
街中の人が、あなたのことを知っているということを。
広告、雑誌、店内のBGM…あなたを見ないものはなかった。
疲れて立ち寄ったカフェで、隣に座った女の子たちが、あなたのことを話している。
コンサート、新曲、新しいドラマの役柄。
ドラマが始まると痩せるあなたのこと、お酒に酔うと甘えるあなたのこと。
他にもたくさん、あなたのことを知っていた。
過去の出来事、家族との会話、ほくろの位置…
私は、そのどれも知らなかった。
なんとなくその場を離れたくて、店を出る。
私なんかより、あなたのことを知っている人が、世の中にはたくさんいるのだ。
家に帰る道すがら、私の知っているあなたを思い浮かべた。
優しくて、あったかい。
はにかんだ笑顔。
大きな手。
お日様の匂い。
趣味のお部屋。
説明するのが苦手で、焦ると挙動不審になる。
あなたからもらった自己紹介の紙。
そして、キス…。
知っているのはこれだけ。
今、見えているあなたしか知らない。
過去なんか知らない。
仕事のことなんか、全くわからない。
ドラマが始まると痩せるとか、酔うと甘えるとか、過去のあなたや家族のこと、ほくろの位置なんか知るわけがない。
胸がザワザワする。
私は、いても立ってもいられなくなって、携帯を取り出すと、封筒に書かれた番号を押していた。
「はい、山田です。お久しぶりですね?どちらにお迎えに行けばよろしいですか?」
私は、目の前にある店の名前を伝えた。
「分かりました。10分ほどで参ります。待っててくださいね。それでは。」
そうしてしばらく待っていると、見覚えのあるタクシーがスッと止まって、ドアが開く。
「山田さん…。」
「はい。どちらに行きますか?」
「どこでもいいです。少し、遠くに行きたいです。」
「分かりました。」
車は動きだし、心地よい振動が身体に伝わる。
身体を座席に預けて、目をつぶった。
「着きましたよ。」
山田さんの声に、ハッと気がつけば、ビルなど一つもない場所にいた。
「降りましょうか?」
ドアが開き、そっと外に降り立てば、鼻をかすめる潮の香り。
「海…ですか?」
「そうです。
もうすぐ陽が落ちます。さ、こちらへ。」
山田さんについて、海へ向かう道を歩いていく。
空は、もうすぐ闇にのまれようとしていた。
薄い羽衣のような雲が茜色の空に、ゆらゆらと浮かんでいる。
「ここに座ってください。」
山田さんに促され、海を一望できるベンチに座った。
じりじりと滲むように、海へ消えていく真っ赤な熱情は、私の身体をも轟々と焼き尽くしていくようだ。
「すごい…ですね。綺麗というか、すごい。怖いくらい。」
「そうですか…。彼も、同じことを言っていましたよ。」
「えっ?」
「時々、仕事が終わったあと、私が彼を家に送ることがあるんです。
まだ、時間の早い時は、ここに来ることがあります。
ただ夕陽を眺めて、それから、家に帰るんです。」
「ここに、ですか?」
「はい。彼は、仕事のことは何も言いませんが、夕陽に向かって、あなたと同じことをつぶやいていました。」
山田さんは、私の方を向いて、和やかに問いかけてくる。
「何か、ありましたか?」
私はコクリと頷くと、今日感じた想いを、ぽろぽろと打ち明けた。
「私、彼のことを何も知らないんです。
今日、街に出て、彼のことをたくさん目にしました。彼のことを話している人にも会いました。
みんな、私より彼のことを知っていました。」
「…そうですか…びっくりなさったでしょう?彼は、そんな風には見えませんからね。あ、見えませんといったことは、内緒にしておいてくださいね。」
山田さんは、目を細めて微笑んだ。
「だけど、男女の出会いは、知らないことが当たり前。
お互いを知りたいと思うことから、はじまるのではないでしょうか?
先に知っているなんて、普通ならあり得ません。
彼は、たまたま世の中の人に、知られていることが多いけれど、本当はあなたみたいに何も知らないところから始まるのが普通です。」
「何も知らないのが…普通?」
「そうです。
…あなたは、彼を知りたいですか?」
私は、頷きながら返事をした。
「それなら、今、あなたの目の前にいる彼だけを見てあげてください。
いろいろな話は、とりあえず耳を塞ぎ、あなたの前で話す彼の言葉を聞いてあげてください。
それだけで、充分 分かるはずですから。」
「…はい。」
「空を見てください。
星が綺麗です。
天の川がよく見えます。
人の心も、この空の星のように、変わることなくあればいいのでしょうけれど…。」
私は、空を見上げる。
あなたの元に、帰りたいと思った。
「そろそろ行きましょう。」
「はい、ありがとうございました。」
星降る夜を抜けて、私はあなたの元に帰ります。
そして、ゆっくり教えてください、あなたのことを。
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ただし、あちらは小説を書く場所なので、画像はありません。
普通に小説を読みに来る方がたくさんいます。
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感謝しています。
tomoe