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追記 妄想小説@「たぶん好き、きっと好き、もっと好き。」(大野智)

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こんばんは。

一番下に、追記のお礼書きました。






……………

















あっ…マジで…もう、無理…

郁ちゃんっ…やめて…


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「もうっ!ふざけないでよ、大野くん。」


私は、手に持ったコップを、ドンとテーブルに置いた。

コップから跳ねた水の粒が、テーブルの上で丸く膨らみ揺れている。




大野くんは、ソファに横になったまま、片目を薄く閉じて、ちょっと笑った。


「だって、無理なんだもん。」


笑ってるけど、額には汗が滲んでいる。
頬も赤い。






大野くんが会社を休んで、3日が過ぎた頃、私は上司に呼ばれ、近くに住む彼の様子を見てきてほしいと頼まれた。

私も、これ以上仕事が増えるのはごめんだし、仕方なく見にきてあげた。

仕方なく…だよ。





インターフォンを鳴らしても、なかなか出てこない。

帰ろうかと歩き出した矢先、カチャンと鍵の開く音がして振り返る。

そして、静かにドアが開いたと同時に、大野くんが、倒れ込んできた。

咄嗟に手を出し、大野くんを支えるように抱きとめると、


「郁ちゃん…だ…


と、私の顔を見て力なく微笑んだ。

ただならぬ様子に驚いて、そのまますぐに病院に連れていき、薬をもらってようやく帰ってきた。


風邪をこじらせたという診断。






で、今、この状態。


「はい、いいから飲んで。」


「やだ、俺、薬嫌い。」


「もうっ、子供みたいなこと言わないで!」


私は、はーっと息を吐いて、大野くんの鼻をギュッとつまんだ。

反射的に口がパカッと開く。


「薬ぐらい、ぐだぐだ言わずにサッサと飲みなさい。」


「イテテテ…やめろっ!」


それでも、薬を近づけるたび、口を真一文字に閉じてしまう。

頑固なやつ。



でもまあ、仕事ぶりを見てれば分かるけど、大野くんは、誰よりも潔くて頑固だ。

こうと決めたら一歩も引かない。

どんなに大きな相手にも、物怖じしないで向かっていく。



年下だけど、仕事に対するその頑固さは、密かに気に入っているところだ。

だけど、薬に対してもこんなに頑固じゃ、ホントに困る。




「もうっ、じゃ、どうすりゃ飲んでくれんのよ?飲まなきゃ治んないし、治ってくれなきゃ私の仕事がどんどん増えるじゃない!とにかく、何でもするから、ちゃんと薬 飲んでよね!」


大野くんは、コップを持って立ち上がった私の手を、ぐっと強く掴んだ。


「な、なに?」


「今、何でもしてくれるって、言ったよね?」


「え?あ、うん、薬 飲むならね。」





「じゃあ…してくれるなら、飲むよ。」


それまでの、邪気のないハムスターみたいな表情から一変する。


「えっ…なにを…


長い睫毛の下で揺らめく瞳は、私をしっかり捉えたまま、大野くんのやけに赤い唇が、ゆっくり開く。



「 く     ち …



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う   つ   し」




その言葉と、まっすぐ伸びてくる視線に射抜かれて、不覚にもドキリとしてしまう。


口移し…?
口で移すこと…?

口と口が合わさる…?


ちょちょちょ…えっ、それってキスじゃないっ!!


「な、なな、何言ってんの?
私は、上司に頼まれて、大野くんの様子を見にきただけですからっ!口移しで薬を飲ます義務なんてないでしょ!」


大野くんは、ギャーギャー喚く私の様子を静かに見つめていた。

私は、焦ってドギマギする心を悟られまいと、ひたすらしゃべり続ける。


大野くんは、それを遮るように、もう一度私の手を強く握って引き寄せた。


「だから…ダメ?」


「あ、あったりまえでしょ、ダメに決まってるから!」


「熱、あるからかな…わがままだね、俺。でも、こんな時じゃないと、言えないから…。」


大野くんは、目を伏せて、私の手をそっと離した。

そのままくるりと背中を向け、ひざをかかえて小さくまるくなる。



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大野くんは、向こうを向いて前髪をいじりながら呟いた。


「じゃあ、もう飲まねーもん。」


「はい?」


「郁ちゃんが、口移しで飲ませてくれないなら飲まない。」


「ちょっと、もう何言ってんの?
それにその、郁ちゃんて呼ぶのもやめてよね。私の方が年上なんだし!

ね、聞いてんの?
ちょっと、ねえ!」


大野くんは、黙ったまま動かない。


「ねえ、ちょっと?」


私は、大野くんの肩をつかんで覗き込む。


「ふふ…さすがに…電池切れ…。」


大野くんは、そのまま目を閉じた。

ハアハアと荒い息をして、ギュッと眉間に皺を寄せて動かない。


「ねえ!」


身体は、燃えるように熱い。

汗で張り付いた髪。
閉じた瞼が時折小さく震える。


「大野くん!」


答えない。
本気でやばいんじゃなかろうか?



薬、早く飲ませなきゃ。
もう、どうにでもなれ!

私は薬を口に含むと、大野くんの顔をこちらに向けた。


半分開いた唇から、熱い息がこぼれてくる。


やばいんじゃないかと思えば思うほど、キュッと胸にこみ上げてくる別の感情。


助けたい。
守りたい。

いつしか、そんな想いが、私の身体を支配する。


仕方なく、ここに来たはずなのに…。





おでこにそっと手を当てれば、びっくりするぐらい熱くて、なぜだか泣けてくる。


私は、息を吸い込んで、ちょっとだけ目をつぶった。

年下の、同僚で、残業仲間で飲み仲間で、それから…


私は、目を開けて、大野くんを見る。

それから、頑固なくせに優しくて、甘え上手で、ここぞというときは、いつも助けてくれて…



私は、ゆっくり顔を近づけていく。

口のなかの錠剤を、舌の上に乗せて、したこともない口移しをしようと息を詰めた。



触れる…


その瞬間、スッと顔を背けられた。






ハアハアと荒い息の合間、ポツポツと絞り出すように、言葉をこぼしていく。


「じょ…うだん…だって、ば…



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いくちゃん…はなれて…うつる…。」


焦点の定まらない潤んだ瞳と、半分開いて濡れた赤い唇が、あまりに色っぽくてドキドキしたのと、

口移しを断っておきながら、それをしようとしたことを知られた気まずさと、

その直前で拒否された恥ずかしさとで、頭がショート寸前。


「もうっ!今さら何言ってんの!とっくにうつってるから!」


カーッと熱くなった私は、半ば強引に、大野くんの唇に、自分の唇を重ねた。

薬を舌で押し込んで、すぐに水を流し込む。


ごほんごほんと咳込んだあと、大野くんは薬をしっかり飲み込んだ。

私はホッとして、自分もゴクリと水を飲む。




少しの沈黙のあと、大野くんがかすれた声で呟いた。

「…ありがと。」


声が耳に貼りつく。
私は、ぎこちなく頷いた。


「キスで…元気でたよ。」


「バッ、バカ言わないで、あれは薬を飲ませただけで、キスなんかじゃ…


「わかってる…でも、俺には…女神のキスだよ…郁ちゃん…俺…。」


熱っぽく潤んだ瞳で見つめられて、また頭が、ぐるぐる回り始める。

瞳の渦に巻かれて、酔ってしまいそう。


「こんな、ときに、ごめん…俺、ずっと、郁ちゃんのこと、好き、なんだ…。」


大野くんの手が、私の頬に触れた。
熱くて、汗で湿った、大きな手。


「好きだ。」


大野くんの親指が、私の下唇に触れた。
心臓がギュッとなる。


「郁ちゃんは、俺のこと…好き…?」


仕事ぶりは好きだよ、でも、大野くんのことは、好きなんだろうか…。


「え…ごめん…今、頭がゴチャゴチャして、わかんない…


本当にわかんなかった。
突然過ぎて、頭が追いつかない。


「じゃ、目…とじてて…俺を…好きにさせてやるから…


大野くんは、私の後頭部に手を回し、ぐっと力を込めた。


「うつったら…もう一度、うつしかえしていいよ…。



「あ、ちょっ…ダメっ…ん…っ…やっ…め…


熱くて燃えるような唇が、私の鼻先を通り、頬に触れ、唇を覆った。

逃げようと思えば逃げられるのに、そうはしなかった。



仕方ないから…来たんだよね…私…?




大野くんのキスは、優しかった。



はーっと大きく息を吐いて、大野くんが唇を離す。


「だめだ…今日は…ここまでしか…できない…治ったら…もっと…



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濡れた赤い唇から何度も放たれる、呪文のような「もっと、もっと」の甘い声。


「もっと…好きにさせてやるのに…




「うん…わかったから。」

私は、大野くんの頭を撫でながら、少し笑った。


愛しさで、胸がいっぱいになる。

今ので充分…。


「郁ちゃん…ダメだ…そんな顔されたら、俺…


射るような大野くんの瞳を見ていられなくて、私は視線を泳がせる。


「と、とにかく、早くなおさなきゃ…


大野くんは、苦しそうに眉間に皺を寄せ、荒い息をしながらも、私を抱き寄せた。


「ちょ、ちょっと待って、大野くんは、病人だし、私、まだ、好きとも言ってないよ?」


「じゃ、今…言って…まだ、俺を好きにならない?」


ああ、もう、私、仕方なく来たはずだったけど…。


「じゃあ、ちゃんと薬飲む?」

「うん…


「ちゃんと仕事する?」

「もちろん…


「もう、郁ちゃんて呼ばないで。」

「うん、わかった…郁さん…でいい?」


「だーめ。」

「じゃ、郁 先輩?」


「ちがうよ。」

「じゃ…なに?」


困った顔の大野くんに向かって、私は、照れ隠しにぶっきら棒に言い放つ。


「…郁。」


「…え?」


「「い、く」って呼んで。
だって私、大野くんのこと、好き…になったかな。あ、たぶんだけど…。」






「…マジで?」


頷く私を、大野くんがまじまじと見つめる。
そんなに見たら、穴が開く。


「あ、う、うん、たぶんね。たぶんだけど好き。」


大野くんは、力強く私を抱き寄せる。
汗の匂いと、心臓の音が、私の想いを加速させた。


「ああ、マジで…嬉しい…たぶんでもなんでもいいよ…郁ちゃん…じゃなくて、郁…俺、風邪こじらせて、良かった…


大野くんは、薬が効いてきたのか、そのまま静かに眠りに落ちた。








仕方なく来たはずだったけど、本当はそうじゃなかった。


わかってた。

ここに来たのは必然で、大野くんが心配でたまらなくて。

きっと私もずっと好きだったんだ。

なのに、それを認めるのが怖くて、気持ちをごまかしていた。



でも、もう違う。

大野くんが、ちゃんと好き。


だから、大野くんが次に目を覚ましたとき、今度は「たぶん」なんてつけないで、ちゃんと好きって言うから…ね。


もっともっと好きになったよ、大野くん。


















to be continued?



……………






挿絵原画


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画家さんに許可をとり、お話に合うように加工してあります。


素敵な絵を使わせてくれて、ありがとう。



ハッピーな一年になりますようにと願っています。



久しぶりの長めの短編。

短いなかにもいろいろな想いを詰め込みました。


読んでくださった皆様、ありがとうございました。



何かありましたら、遠慮なく言葉を置いていってくださいね。

大切に読ませていただきます。




今日も素晴らしい一日を!




tomoe








……………




追記


~お礼~




こんばんは。


こちらにて、まとめてのお礼で申し訳ありません。


今朝、このお話をアップしてから、沢山のコメントやメッセージ、イイねをありがとうございました。


ちょっと、びっくりしてしまって、上手く言えませんが、

お休みしてから、アクセス数も半分になりましたので、
ここにいた皆さんも、てっきりいなくなってしまったもんだとばかり思っていて…

そんな中での、たくさんの方から「お話待っていたよ」のお言葉に、びっくりするやら嬉しいやらで…

お休みを決める前から、お話は書いていなかったので、こんなにちゃんと仕上げて書いたのは久しぶりで、

いいんだか、悪いんだか、なんだかもう良くわかんなくなっていて、

雪女の時にも書いたんですが、アップするのはとても不安でした。


しかも、人気の絵師さんとのコラボ?となれば、その不安も緊張も倍増で、

絵師さんにも、絵師さんのファンの方にも、失礼のないようにと、ドキドキしつつ書き上げました。

お話にはキスシーンはあれど、きわどい描写もないし、果たして皆さんに喜んでいただける内容になっているのか、

キュンとさせることはできるのか、
智くんのイメージが崩れてしまわないか、

とにかく、たくさんの不安の中、更新させていただきました。


おかげさまで、絵師さんにも喜んでもらえ、こうして皆様からも温かく迎えてもらえ、今はただただホッとしております。


ありがとうございました。

感想の中には、具体的にここが好きと書いてくださる方もたくさんいらしてくれて、

どこでドキドキ、キュンキュンしていただけたのかが私に伝わり、すごく参考になりました。

今後、もしまたお話を書くことになったら、今回の感想を充分参考にしたいと思います。


続編、あるのか、ないのか、これまた、すぐにとはいきませんが、リクエストをたくさんいただきましたので考えてみます。

が、あまり期待せず、待っていてくださいね。


まだまだ忙しく、なかなかゆっくり書けなくて、加えて持病の検査も控えているしで、

まだまだのんびりペースのブログですが、少しでも楽しんでいただけると、私も嬉しいです。

今回は、本当にたくさんお声を聞かせていただき、ありがとうございました。


感謝しています。


寒くなりましたので、風邪などひかぬよう、温かくしてお休みくださいね。


それでは、また、明日(^^)





tomoe
















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