Quantcast
Channel: Blue Moon
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2401

妄想小説@「初夏の風になりて、今 君のもとへ。」②(大野智)

$
0
0


















23:59




デジタル時計の表示が大きく変わり、今日が終わって、明日になった。





{78C93D45-21E1-452E-AD60-278CFBA18B70:01}





「どうしたんだろう…。」


今朝のメッセージを、もう一度開いてみる。



『今日、絶対優勝してくるから。』



カレンダーを見てから、もう一度画面に視線を落とした。



未だに、大野からの連絡はない。


携帯を振っても、再起動させてみても、何の変化もなかった。



「待ってて」と言われているし、私からは連絡し辛い。



それでも、携帯の画面に伸びる指先。







ドウシタノ?


これじゃあ、なんかね…。疲れて寝てるだけかもしれないし…消去。





ユウショウシタ?


連絡来てないんだから、優勝してないかもしれないよね…消去。





モシカシテ、マケチャッタノー?


思い切って明るめに…って言っても、文字じゃ明るさは伝わらないよね。

嫌味に聞こえちゃったら嫌だし…消去。





イマ、ナニシテル?


聞きたいけど…消去。





ゲンキ?


だよね。わざとらしいから…消去。





ワタシノコト、ワスレチャッタノ?


はあ…消去。





ベッドに仰向けに寝転んで、

そっと目を閉じれば、脳裏に浮かぶ あの日の大野。







『お前といると楽しーよ。』




{D0AFEC0A-4824-4732-ADDD-9095923B7FE9:01}





『待ってて、絶対優勝するから。』




{A058A7BD-F735-48F8-BCBE-BF3397282567:01}






指が画面を滑り、溢れる気持ちが言葉になる。






アイタイ




コエガキキタイ





オオノガ…

オオノガ…ス…





だけど、
その先の文字が打てなくて、指が止まる。


私は、答えを探すように、カバンに目を向けた。





『…大野のグリップ、ボロボロじゃん。』


『あ、そっか?なんか、買いに行く暇なくて。』



大野のグリップが、ボロボロなのは知っていた。


だから、なんだかんだ言って、あげるつもりで持ってきたグリップを、

ジャージのポケットから取り出して、大野の前に差し出した。




『じゃ、これ、あげるよ。私、もう使わないから。』



『なんで?お前、テニスやめちゃうの?』


『やりたいけど、向こうの学校には、テニス部が無いんだって。』



『そっか…。なんか、残念だな。うん、じゃ、もらっとく。その代わりにこれ、お前にやるよ。』






そうして私の元に来た、あの「S」のキーホルダー。


今は、私のバックについていた。






{D4E03FAC-E2CA-448B-BF6A-896652546D6E:01}




『俺が、お前といつも一緒にいたいって思ってるってこと。』



そう言ってたのに、
これがここにあるってことは、

もう、一緒にいなくてもいいってことなのかな?



うん。
きっと、そうなのかもしれない。

私なんか、必要ないって意味かもしれない。







それなら、もういい。

…全部   消去。




そう思い込んで、

私は、どこにも持っていきようのない気持ちを、無理に消去するしかなかった。



ぽっかり空いた心に、別の感情が湧き上がってくる。






オオノナンカ   ダイッキライ



もう、知らない!
待ってろって言ったくせに!


ウソつき!

顔も見たくない!







私は、自分の壊れそうな心を守るために、大野に怒りをぶつけた。

見えない不安や取り残された寂しさから、一刻も早く逃れたかった。





「私、今まで何やってたんだろう?
…めっちゃウケる。」















「大野のウソつき。最低。」



送信。






そのまま返信を待たずに電源を切り、布団をかぶって目を閉じた。















翌朝、


寝たのか寝ていないのか、ふわふわと目が覚める。



右手に握ったままの携帯。




{27BD541C-994D-497C-ADE8-F7A699607C0A:01}





恐る恐る電源を入れれば、すぐに待受けの黄色いボールが映る。



…ラッキーボールなんて、誰が言ったんだか…。




しばらく指を滑らせてから知る現実に、長く息を吐いた。




「そりゃ、そうだよね…。」



電源を切る前と全く同じ。
何度見ても、何もない。




「もういい、ほんとにもう、忘れよう…。」










外は雨。



{E4243E28-81F3-4BF4-AE5C-5D489560DC5B:01}





15の私には、

これ以上どうすることもできなかった。

















~続く~








続き、書いたよ~\(^o^)/








Viewing all articles
Browse latest Browse all 2401

Trending Articles