Quantcast
Channel: Blue Moon
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2401

小説@時代物「山風五剣伝」①リメイク版

$
0
0










これ、3年近く前に書いた時代物です。
 
今、どうしても書きたくなって、
かなりリメイクして、もう一度アップします。

お好きな方だけ読んでくださいね。
文字数の関係で、詰まっていますがご了承ください。
 






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第一話






時は戦国の世。

 

 山風頼通は、妖田兼定を滅ぼした。

妖田一族は、落城の瀬戸際に呪いの言葉を言い放つ。

 
時は流れ、妖田一族の呪いは形となって復活し、山風一族を追い詰める。
頼通の娘、雪姫は、生まれたばかりの娘とともに、山奥の祠に逃げ込むも、直ぐに妖田の追手に見つかってしまう。


姫は、娘を家来に託し、自ら祠に火を放つ。
燃え盛る火の中、姫は静かに目を閉じる。

「どうか…歌姫を…お守りください。そして、山風の勃興を願い…ま…す。」

龍の如く巻き上がる炎は風を呼び、妖田の追手を吹き飛ばす。
そして、炎の先から吐き出された姫の魂は、5つに分かれて空へと放たれた。

 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


呪いの力で生き返った妖田一族が、全てを力で支配する残虐な世界。

歌姫は、山奥の小さな村で、逃げ延びた家来の娘として、何も知らずにひっそりと暮らしていた。

姫が18になったとき、家来は病にかかる。
家来の死の間際、姫は、自分が山風一族の末裔であることを告げられた。

「母上様の願いをどうか…歌姫様のお力で…どうか…。」

姫は、冷たくなった家来の手を握り、溢れる涙をこらえきれずに泣いた。

「だが…私一人では…どうすればよいのだ…。」


途方に暮れる姫の前に、ある日一人の僧侶が訪れる。
 僧侶は、懐から古びた一枚の紙を取り出した。

「私は、風に導かれてこの村にやってきた。このあたりで、このような痣を持つ娘を知らないか。」

 
姫は、僧侶の絵を凝視する。見覚えのあるものだった。

「これは…。」

そこに描かれた絵は、物心ついた時にはすでにあった胸の痣と同じであった。

「…これのことか?」

姫は、襟を開いた。
僧侶の目は大きく見開き、唇はブルブルと震えている。

「おおっ!では、あなたが歌姫様!」

僧侶は、姫の前に膝まづき、頭を下げた。

「この痣は、雪姫様の力が宿りし証。どうか、姫のお力を。」

 

 僧侶は、山風に仕えていた者の子孫だという。

 言い伝えのもと、私を探し出してくれたというのだ。


「それが、私の定めならば参ろうぞ。おぬしの名はなんと申すか?」

「私のことは、枡(マス)とお呼び下さい。」

 

「では、枡、頼んだぞ。」

 
「はい、姫様。」

 

 

こうして、歌姫と枡は、村を出て五人の剣士を探す旅に出た。




…深夜…

 

 歌姫が寝ている部屋に、侵入者の気配。

 

「何奴!」

 

 枡が侵入者に斬りかかる。

 

「 おわっと、すまんすまん!ちょっと食べ物を頂こうかとのぞいたまでよ…なあ、パンの助。」

 
「ウキー!!ウキキ!」

 

 みすぼらしい格好をした男と、一匹の猿。
鋭く光る瞳から、フッっと気配を消した。

 

{EFAD616E-A9A4-459D-B459-7D7670BF6628:01}


「なんじゃ、乞食か。ほれ、これを持っていくがよい。」

 
「へい、ありがとうございます。」


男が手を出すと、その掌に姫と同じ痣があるではないか。

 

 「姫様!!歌姫様!!」

 

 「何じゃ?」

 
「これを…。」

 

枡が、男の手を広げて歌姫の前に差し出した。



「これは…!おぬし、名を何と申す。」

 

「いててて!か、風間雅紀じゃ。」



姫は枡の手に触れ、こくんと頷いた。

 

「そうか…枡、手を離してやれ。雅紀とやら、その痣をこちらへ。私によく見せておくれ。」

 

 雅紀は、着物の乱れを直しながら、ずずっと鼻をすすった。

 
「なんじゃなんじゃ、みんなして。これがそんなに珍しいのか?ほれっ!」

 

 歌姫がその手に触れると、雅紀の胸元がぽうっと光る。

 

「わわわわっ、なんじゃなんじゃ!!」

 


 
「…おおっ、姫様、やはりこれは!雅紀とやら、おぬし、光る玉を持っておらぬか?」

 

 雅紀は小さく頷き、懐から取り出したそれは、正しく雪姫の身体から放たれた光る玉。

 

 「母ちゃんが守り神だと言って俺にくれた。」

 

 玉に刻まれた「信」の文字。

 

 
「雅紀…探していたぞ。」

 

 歌姫は、驚く雅紀の手を握って、瞳を覗く。

 

「私と一緒に来てはくれぬか。」

 

「へ?そ、それはどういうことじゃ?」

 

「おぬしにその玉を授けた母上は…?」

 

 

枡が尋ねた。
雅紀は、唇を噛み締めながらポツリと答えた、

 

「おらん。父も母も妹も、村のみんな全部…妖田一族にやられた…。あいつら、ぜってーゆるせねー。」

 

 「そうか…。我らは、妖田一族を滅ぼすために参った。雅紀、お前の力を貸してほしい。」

 

 
「なんじゃと?」

 
「お前のこの痣とこの光る玉が、我らが探している5人の剣士であるという証。」

 

雅紀は、驚いた顔で私と枡を代わる代わる見る。
私が頷き、枡も頷くと、雅紀は、ニカッと大きく口を開けて笑った。 

 

「よし!行ってやるぜ」

 

 雅紀は、私の手を掴んでぶんぶん振った。

 

 「お、おい、こら、雅紀、姫に簡単に触れるでない!」

 

「いいじゃねーか、仲間なんだし、なあ?よいぞ。ついていこうぞ!なあ、パンの助。」

 

 「ウキー!ウキキキ、ウッキーーーー!!」

 
 こうして、雅紀が私たちの仲間に加わった。

 

 


あと四人。

残る剣士はいづこに。







つづく。


…………………




雅紀の持つ玉「信」とは。


儒教において、五常の一徳目であり、友情に厚く、人をあざむかないこと、誠実なことをいう。






Viewing all articles
Browse latest Browse all 2401

Trending Articles